メセン

改訂新版 世界大百科事典 「メセン」の意味・わかりやすい解説

メセン (女仙)

ツルナ科のうち,南アフリカ分布の中心とする多肉植物の一群を観賞園芸上メセンブリアンテマMesembryanthema類,略してメセンと総称している。かつてリンネはメセンブリアンテムム属Mesembryanthemumの1属で扱ったが,20世紀になって,ケープ大学のボルスL.Bolusやキュー植物園のブラウンN.E.Brownなどによって120属もに細分された。2000種以上を含み,サボテンと並ぶ多肉植物の大群であるが,サボテンとは多肉化の傾向が異なり,葉が多肉質になる。オーストラリアやチリに分布するカルポブロトゥス属Carpobrotusなどの数属を除いては,アフリカ南部に集中する。花は多数の細い花弁を持つが,それをおしべ変形とする説もある。花の多くは昼開性で,太陽の下で開花し,夜間は閉じるが,夜開性の種群もある。果実は複雑で多様であり,属は主としてその特徴で分けられる。一般の果実と違って,湿ると開き,乾くと閉じる。

 茎葉の形態から園芸的には一年草,多年草,茎の有無,多肉の程度などから次の4群に大別できる。(1)一年生群 代表種はリビングストン・デージーLivingstone daisy(別名ケープ・デージーCape daisy)Dorotheanthus bellidiformis N.E.Br.で,茎は分枝し,へら形の多肉葉や茎には小さい透明の突起が多数散在する。花は直径4cmくらいで,花色は赤,桃,白,淡黄色がある。(2)多年生で有茎群 木質化した明瞭な茎があり,代表的な属にマツバギクLampranthusデロスペルマ属Delospermaオスクラリア属Osculariaルシア属Ruschiaトリコディアデマ属Trichodiademaなどがある。デロスペルマ属は約125種を含み,葉に半透明の乳頭状突起を持つ種が多い。普及種に葉が卵形のハナガサ(花笠)D.echinatum(Ait.) Schwant.がある。オスクラリア属は3種知られ,コトヅメギク(琴爪菊)O.eaulescens (Mill.) Schwant.は三稜形で,鋭い数個の鋸歯がある。ルシア属は350種を含む大きな属で,多くは低木状で,種によっては古葉が茎を包む。トリコディアデマ属は葉の先端刺毛があり,外観サボテン科のマミラリア属Mammillariaに似る。根は木化し球根状になる。(3)多年生で短茎か無茎,葉は三角錐状で多数の群 ファウカリア属Faucariaは葉縁に鋭い鋸歯が並び,午後に開花し,花は黄花が多い。33種含まれる。ティタノプシス属Titanopsisは8種あり,鋸歯はないが,葉の表面がいぼ状の突起でおおわれる。ベルゲラントゥス属Bergeranthusは小型で,群生し葉は細く,メセン類では例外的に耐寒性が強い。(4)多年生で無茎,少数の葉が高度に多肉化した群 玉型女仙(たまがためせん)と呼ばれるグループで,リトープスLithops,コノフィトゥム属Conophytumのほか,葉の上部が半透明の凸レンズ状になったフェネストラリア属Fenestraria(2種あり,代表種はイスズダマ(五十鈴玉)F.aurantiaca N.E.Br.),オプタルモフィルム属Opthalmophyllum(18種),アルギロデルマ属Argyroderma(約50種),プレイオスピロス属Pleiospilos(33種)やギッバエウム属Gibbaeum(約20種)などの諸属が見られる。

 高度に多肉化した種群は高温多湿を嫌うので,夏期には通風のよい日陰で,水を控えて育てるか,強制的に断水する。
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百科事典マイペディア 「メセン」の意味・わかりやすい解説

メセン

ツルナ科の中でアフリカ南部原産の多肉植物群はメセンブリアンテマ類と総称され,園芸界ではそれを略して〈メセン〉と呼ぶことがある。分類学者の見解にもよるが,ざっと百余属2000種があり,極度に乾燥した環境に適応したユニークな形態と生態をもつ植物群として知られている。多肉化の程度は一定ではなく,葉や茎の区別がつくもの(マツバギク)から,植物体が1個の玉型をなすもの(リトープスコノフィタム)まであり,園芸的な扱いのうえから,〈葉物メセン〉,〈低木メセン〉,〈花物メセン〉,〈玉型メセン〉などと分類されている。

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