配偶体(読み)ハイグウタイ(その他表記)gametophyte

翻訳|gametophyte

デジタル大辞泉 「配偶体」の意味・読み・例文・類語

はいぐう‐たい【配偶体】

配偶子をつくり、有性生殖を行う世代の生物体。シダ植物前葉体など。→胞子体

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精選版 日本国語大辞典 「配偶体」の意味・読み・例文・類語

はいぐう‐たい【配偶体】

  1. 〘 名詞 〙 世代交代を行なう植物で、配偶子を生じる時期の植物体をいう。コケの栄養体、シダの前葉体がこれにあたる。

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改訂新版 世界大百科事典 「配偶体」の意味・わかりやすい解説

配偶体 (はいぐうたい)
gametophyte

配偶子をつくる有性世代の生物体。一般には胞子から発生し,配偶子囊とよばれる囊状の器官を生じ,その中に配偶子をつくる。核相はふつう単相(動物では複相)で,体細胞分裂によって配偶子ができるが,複相の場合は減数分裂によって配偶子ができる(カサノリヒバマタなど)。配偶体と胞子体が交互にくり返されて世代交代が起こるが,配偶体世代だけからなる場合もある(アオミドロ,シャジクモなど)。種子植物以外の配偶体は胞子体から独立して生活する。多細胞藻類の配偶体は糸状,軸状または葉状で,胞子体と同形のものもあれば異形のものもある。コケ植物の配偶体は目だちやすく,複雑な構造をもち,とくに蘚類や苔類の一部では茎葉の分化がみられる。シダ植物の配偶体は小型で,ゼンマイなどシダ類の心臓形をした葉状の配偶体は前葉体と呼ばれる。マツバランヒカゲノカズラなどの配偶体は軸状または塊状で,ふつう葉緑体を欠き,体内に内生菌類をもち,腐生生活をする。イワヒバ類やデンジソウなどの水生シダのように異形胞子をもつものでは,配偶体に雌雄の別があり,雌性配偶体の方が大きい。

 種子植物の配偶体は胞子体から養分をもらって生き,雌雄の別がある。雄性配偶体は小さく(裸子植物では数細胞,被子植物では3細胞),花粉中につくられ,発芽して花粉管になる。雌性配偶体はそれよりも大きく(被子植物ではふつう8細胞,裸子植物はもっと大きい),胚珠の中につくられ,裸子植物では胚乳,被子植物では胚囊 embryo sacと呼ばれる。配偶体の化石はほとんど知られていないが,原始的な維管束植物で,胞子体とほぼ同形の配偶体があったと推定されているものがある。陸上植物のうち,コケ植物は発達した配偶体をもつが,維管束植物の配偶体では,性の分化,小型化,独立栄養から従属栄養への転換などの進化的傾向がある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「配偶体」の意味・わかりやすい解説

配偶体
はいぐうたい

配偶子を生じる母体を配偶体といい、世代交代を行う生物では、有性世代の生物体が配偶体である。精子や雄性胞子を生じる体を雄性配偶体、卵(らん)や雌性胞子を生じる体を雌性配偶体、精子や雄性胞子と卵や雌性胞子とを同時に生じる体を両性配偶体という。しかし、世代交代を行わない生物では、体そのものが配偶体であるか、または配偶体が寄生的に存在することとなる。

 シダ植物以下の下等な植物では、世代交代を行い、配偶体の存在は明確である。緑藻植物のアオサでは配偶体と胞子体とが同形同大であるが、褐藻植物の配偶体は、胞子体に比べて小さい。また、緑藻植物のミルや褐藻植物のホンダワラ類は、世代交代を行わず、体の核相は複相(2n)で、体そのものが配偶体である。コケ植物では、通常みかけるコケの体が配偶体であり、受精後、配偶体の上に胞子体が形成される。シダ植物では前葉体が配偶体である。種子植物では、花粉管が雄性配偶体に、胚嚢(はいのう)が雌性配偶体に相当する。

 腔腸(こうちょう)動物のミズクラゲでは、有性生殖をする体が配偶体である。一般に動物では配偶体の核相は複相であり、植物では単相(n)である場合が多い。菌類は、普通、単相生物で、栄養増殖の末期にごく短い期間の複相がある。近年、培養技術の進歩により、菌類でもさまざまな生殖方法や生活環が知られるようになってきたが、環境条件や、菌の変異性などにより、かならずしも順序正しく生活環をたどるわけではなく、単相体でも無性的に増殖するものが多い。したがって、菌類では単相体でも配偶体ということばは使われないのが普通である。

[吉崎 誠]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「配偶体」の意味・わかりやすい解説

配偶体
はいぐうたい
gametophyte

世代の交代をする植物において,胞子を形成する造胞世代の体に対し,配偶子を形成する有性の世代をいう。普通にみられるコケ類 (ゼニゴケ,スギゴケなど) ではその本体が,シダ類では前葉体がこれに相当する。種子植物では造胞体が著しく進化し,逆に配偶体は退化した形になっている。すなわち子房内に生じる胚珠の内部の珠心と,柱頭から伸長する花粉管が退化した配偶体である。"phyte"の原義は植物であるが,配偶体の語は動物にも用いられる。

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世界大百科事典(旧版)内の配偶体の言及

【コケ植物(苔植物)】より

…生殖器官が多細胞で,受精卵が母体内にとどまり,その後の発生も母体から養分を吸収して行われる点で,藻類と異なる。また,配偶体が生活史の主体を占め,胞子体は構造が単純で配偶体に寄生し,維管束を欠く点で維管束植物と異なる。最古の化石は上部デボン紀にさかのぼるが,その後の化石はわずかで古生物学的に進化の跡づけを行うことは困難である。…

【シダ植物(羊歯植物)】より

…一般にシダ類といわれるものは真正シダ類fernで,シダ植物にはほかにマツバラン類psilotum,石松(せきしよう)類lycopod,トクサ類(有節類)horsetail(これらをひっくるめてfernalliesという)が含まれる。
[生活環]
 種子をつくらない維管束植物はすべて,生活史のうちに,独立の生活を営む胞子体の世代(ふつうにみられるシダの体)と配偶体の世代(前葉体)をもち,それらが交互に現れる規則正しい世代交代を行っている。胞子が発芽すると配偶体になるが,シダ植物のうちの多くのものでは,心臓形をしてせいぜいmm単位の大きさの前葉体と呼ばれる構造をもっている。…

【世代交代】より

…胞子が発芽すると,やがて普通長径が1cmにも満たない薄いハート形の植物体をつくる。この植物体は造卵器と造精器を生じ,それぞれが卵と精子という配偶子をつくるので配偶体という(シダ植物の配偶体は特に前葉体という)。この配偶体(前葉体)は単相の胞子から発達したものだから単相であり,配偶子という有性生殖細胞をつくるので有性世代である。…

※「配偶体」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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