翻訳|roasting
金属製錬の予備処理として、製錬本工程に適する化学組成にするため、鉱石が溶融しない程度の温度で化学変化をおこさせる処理をいう。たとえば鉛・亜鉛などの非鉄金属の鉱石の多くは硫化鉱であり、そのままの形では金属に還元することも、また酸などに溶解することもむずかしい。そこで、これに空気を送って加熱すると着火し、継続的に反応して酸化物になると同時に硫黄(いおう)分は燃焼・酸化して亜硫酸ガスとなり、鉱石から分離除去される。酸化された鉱石は還元も酸への溶解も容易となる。これは酸化焙焼の例で、亜硫酸ガスとして分離した硫黄はさらに酸化して水に吸収させ硫酸として回収するのが普通で、酸化に伴う大量の発熱はボイラーにより蒸気あるいは電力として回収される。
焙焼には従来種々の炉が使われてきたが、現在では、完全密閉式で自動操業ができ、温度制御性と炉内均一性に優れた流動焙焼炉が使われるのが普通である。
焙焼には前述の酸化焙焼のほか、低品位の褐鉄鉱を還元焙焼して磁性をもつ磁鉄鉱に変え、磁力選鉱によって高品位化する例や、水溶性にするため、硫化鉱を硫酸化焙焼して硫酸塩に変えたり、酸化鉱を塩化焙焼して塩化物とするなど、目的によりさまざまな焙焼法が行われる。塩化焙焼の例として、チタンの原料であるルチル鉱を塩素ガス中で焙焼して四塩化チタンとし、これをマグネシウムで還元する製錬法がある。
[阿座上竹四]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
金属製錬の予備処理工程の一つで,鉱石を融点以下の温度で加熱し,揮発性の成分を除去したり,化学反応によって化合物の形を変化させることをいう。工業的に広く行われているのは硫化鉱の酸化焙焼である。たとえば亜鉛製錬では,精鉱を空気中で加熱して主成分の一つである硫黄を二酸化硫黄の形で除去し,亜鉛を酸化亜鉛にする焙焼工程が必要である。ほかに,酸化物原料にコークスと食塩を混ぜて加熱し,塩化物を得る塩化焙焼,鉄鉱石などを水素雰囲気中で加熱する還元焙焼などがある。石灰石を熱分解して生石灰と炭酸ガスを得る方法や水酸化アルミニウムを加熱脱水してアルミナをつくる方法は煆焼(かしよう)と呼ばれる。高い温度で焙焼して焼結した生成物を得る場合には一般に焼結と呼ぶ。
執筆者:増子 昇
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