改訂新版 世界大百科事典 「ルキリウス」の意味・わかりやすい解説
ルキリウス
Gaius Lucilius
生没年:?-前102ころ
ローマの風刺詩人。ラティウム地方の町スエッサ・アウルンカの裕福な市民の家に生まれた。生年は前180年ころとも推測されている。ルキリウスは裕福であるとともに,スキピオ(小)をはじめとする第一級の人物たちと交友関係を結んでいた。彼が臆するところなく有名人たちを批判する風刺詩を公にしえた大きな理由の一つは,彼自身が特権的身分を有していたことにある。ルキリウスは,後にホラティウス,ペルシウス,ユウェナリスらの詩人たちに継承されていった風刺詩というジャンルを開発し,その韻律として6脚韻を用いることを確立した。彼が風刺詩のテーマとして取りあげたさまざまなモティーフは,ホラティウスの風刺詩の中にもみることができる。カトゥルス以前の詩人たちの中でラテン文芸に最も偉大な貢献をした一人であるこの詩人の作品が,断片でしか伝わらなかったのは大きな損失である。
執筆者:平田 真
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報