レガーリエン(英語表記)Regalien; regalia

改訂新版 世界大百科事典 「レガーリエン」の意味・わかりやすい解説

レガーリエン
Regalien[ドイツ]

中世ヨーロッパにおいて,国王のみが独占的に行使し,また他人に付与しえた大権をいう。ラテン語ではレガリアregalia。レガーリエンという観念は,すでにフランク王国時代から認められるが,それが概念的に明確化されたのは,ドイツ王国(神聖ローマ帝国)においてである。すなわち聖職叙任権闘争期に,俗権と教権の範囲を明確に限定する必要が生じ,すなわち1111年のストゥリ協約によって,大公領・辺境伯領・伯領(具体的にはこれらの任命権),貨幣鋳造権,関税徴収権,市場開設権,裁判権,王宮とその付属物,ミニステリアーレ,帝国直属城塞がレガーリエンに含まれるとされ,とくに帝国教会財産に関し,従来国王から教会に与えられていたすべての高級官職,裁判高権と軍事高権,すべての重要な財政上の権利が,レガーリエンに属することが確認された。1158年のロンカリア帝国会議では,すべての交通路(道路ならびに河川)に対する高権,あらゆる種類の裁判収入,没収所領,租税森林狩猟・漁猟権,埋蔵資源もまたレガーリエンに含まれることになった。その後,領邦国家への発展過程で,一連の特権付与(1220年,31年の二つの諸侯法,1356年の金印勅書など)により,レガーリエンの多くはランデスヘル(領邦君主)の手中に帰し,さらに彼らは明確な特権付与を待たず,事実上その権利を行使したため,帝国の手には道路・河川高権,また限られた地域での貨幣鋳造権,関税徴収権しか残らない状態となった。レガーリエンは19世紀に消滅するが,形を変えて近代国家専売権として生き残った。なお,司教座・帝国修道院長職が空位となった場合,教会の財産や諸権利から生ずる収益を,国王が利用しうる権利もレガーリエン権と呼ばれた。利用期間はその後,1年間に限られるようになった。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「レガーリエン」の意味・わかりやすい解説

レガーリエン
Regalien; regalia

中世ヨーロッパで国王のもっていた収益を伴う諸特権の総称。貨幣鋳造権,関税徴収権,狩猟権,鉱業権,採塩権,市場開設権,ユダヤ人保護権などが含まれる。レガーリエンは公権および私権の2性質を兼ねそなえた独自の権利で,近代初期の絶対主義王権存立の重要な基礎となったほか,ドイツでは皇帝フリードリヒ2世 (在位 1220~50) 以来この権利が次第に領邦諸侯の手に移り,領邦君主権の確立に重要な役割を果した。近代国家では,これは変質あるいは廃止され,比較的最近までこの権利が残されていたドイツにおいても,19世紀中頃には,国民の所有権に対する制限としての意味しかもたなくなった。なお中世ドイツでの特別の用語法として,司教教会のもつ世俗権,あるいは司教座空位の場合の国王の中間収益権をレガーリエンと呼ぶことがある。

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