私権(読み)しけん

日本大百科全書(ニッポニカ)「私権」の解説

私権
しけん

私法上の権利の総称で、公法上の権利たる公権に対置される。もっとも、このように私法と公法とを区別することの必要性、さらにその区別の標準については、種々の議論があってかならずしもはっきりしておらず、したがって、私権および公権の概念もそう明確にはなっていない。しかし、いちおう次のようにいうことができる。すなわち、公権とは、国家的ないし政治的な公的生活を規律する法(公法)によって認められた権利であるのに対して、私権とは、対等独立な私人の間の関係を規律する法(私法)によって認められた権利である。たとえば、財産権(物権・債権・無体財産権など)、身分権(親族権・相続権など)、人格権、社員権などは私権の例である。

 19世紀的な個人主義・自由主義の法思想の下では、私権の行使は自由と考えられていた。しかし20世紀的法思想の下では私権の行使には社会的制約が伴う。このことを、憲法は「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める」(29条2項)と規定して宣明し、民法は「私権は、公共の福祉に適合しなければならない」と表している(1条1項)。

[淡路剛久]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「私権」の解説

私権
しけん

私法関係において認められる権利をいう。公権に対する概念である。この公権と私権の区別は,私法と公法との中間区域として社会法が出現拡大しているため,次第に意義を失ってきている。かつては,私権の行使は絶対的に自由だとされていたが,近時,私権も法秩序の一部であることが強調され,公共の福祉を理由とする制限が広く承認されることとなった (民法1条1項) 。私権は,その内容の点から財産権,身分権 (親族権) ,人格権,社員権,その作用の点から支配権請求権形成権抗弁権,効力範囲の点から絶対権,相対権,一身専属権,一身非専属権などに分類される。

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百科事典マイペディア「私権」の解説

私権【しけん】

私法関係における権利。公権と対比される。その内容をなす利益の性質から財産権(物権・債権・無体財産権)と非財産権(人格権・身分権など),その効力の範囲から絶対権(物権)と相対権(債権),その作用から支配権・請求権・形成権などに分類される。私権をもつのは自然人と法人である。私権は〈公共の福祉〉によって制限され濫用は許されない(民法1条)。
→関連項目権利水利権

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精選版 日本国語大辞典「私権」の解説

し‐けん【私権】

〘名〙 私法上認められる権利。財産権、身分権、人格権、社員権など。⇔公権
※立憲政体略(1868)〈加藤弘之〉国民公私二権「私権とは私身に関係する所の権利にして所謂任意自在の権と称する者是なり」

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世界大百科事典 第2版「私権」の解説

しけん【私権 private rights】

私法上の権利。法律は,理論的に公法と私法とに大別できる。公法は,国家社会と国民の間を規律するものであり,この公法上の権利を公権という(例えば,国家の刑罰権,統制権など,国民の参政権受益権など)。これに反し,私法は,市民社会における私人相互間の法的な権利義務関係を定めるものであり,この私法上の権利を私権という。これには,借金の返還請求権や土地建物の明渡請求権,交通事故の損害賠償請求権,さらには所有権や特許権などのような財産権と,親子・夫婦間の権利義務や相続関係などのような身分権とがある。

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