登録を受けた一定の土地の区域すなわち鉱区において,登録を受けた鉱物を掘採取得する権利(鉱業法5条)。地中の未掘採鉱物の支配については,比較法的にみて,二つの制度がある。その一つは,英米法にみられるように土地所有権の支配に服せしめるものであり,いま一つは,大陸法にみられるように土地所有権とは別個の権利,すなわち,鉱業権の支配に服せしめるものである。日本ではドイツの鉱業法を継受したので,後者すなわち鉱業権制度を採用している。
鉱業権は,物権とみなされている(12条)。しかし,その権利の性質については,従来,物権的取得権説,土地用益物権説,鉱区支配権説および鉱物支配権説などが対立している。鉱業権が沿革的には未掘採鉱物に対する土地所有権の一権能の分離・独立したものとみられること,および鉱業権の未掘採鉱物への支配性などを考慮すれば,鉱業権の性質については,地中未掘採鉱物を客体とする物権説すなわち鉱物支配権説が正当といえよう。したがってまた,鉱区内において鉱業権によらないで土地から分離された鉱物は,当該鉱業権者の所有とされるわけでもある(8条)。
鉱業権には,試掘権と採掘権の2種類がある(11条)。試掘権は,鉱物の採掘経営が成り立つかどうかを調べ,本格的に採掘するための採掘権を取得すべきかどうかを知るための鉱業権である。試掘権の存続期間は2年とされている(石油の試掘権は3回,その他は2回延長可能)が採掘権には存続期間の制限はない。鉱業権は,原則として日本国民または日本国法人であれば,だれでも,その資産,能力,鉱物発見の前後などに関係なく,先願主義に基づき,通商産業局長の許可を受けて取得することができる。また,上記のようにして取得された鉱業権は,相続その他の一般承継,譲渡,滞納処分および強制執行等の目的となる以外は,権利の目的とすることができない。ただし,採掘権は,抵当権および租鉱権の目的とすることができる(13条)。
鉱業権の行使は,その権利の性質上,地中での生産が大部分であるから,土地所有権との抵触を生ずることが多い。そのため,鉱業法は,鉱区禁止制度(15条),鉱業権取消制度(53条),掘採制限制度(64条)などを設けて,両権利の調整に努めている。しかし,これらの制度だけでは必ずしも十分ではなく,そのため,鉱業権と土地所有権との調整については,従来,土地所有権優位説,鉱業権優位説,権利対等説などの諸説が対立している。土地所有権は土地,鉱業権は鉱物を客体とする別個独立の対等の権利であるから両権利の,いわば相隣関係的に調整する理論が妥当と思われる。いずれにしろ,両権利の調整には多くの困難が伴い,その結果,現実には各種の鉱害紛争が発生している。
→鉱業法 →租鉱権
執筆者:徳本 鎮
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
登録を受けた一定の地域(鉱区)で、登録を受けた鉱物およびこれと同種の鉱床中に存する他の鉱物を掘採し、取得する権利。鉱業権は、鉱物を埋蔵している土地の所有権とは別個独立の権利であって、鉱業権を付与する権能は国に属する。
鉱業権を得ようとする者は、経済産業省経済産業局長に出願し、その許可を受け、鉱業原簿に登録することによって、鉱業権を取得する。鉱業権者となりうる者は日本国民または日本国法人に限られ、早く出願した者に優先的に許可が与えられる(先願主義)。原則として同一の地域では2以上の鉱業権を設定することができない。鉱業権には試掘権と採掘権との2種があり、採掘権は無期限、試掘権は登録から2年で2回(石油の場合は3回)延長できる。鉱業権は物権の一種とみなされ、不動産に関する規定が準用される。鉱業権は土地所有権とは別個の権利であるから、土地所有者といえども、可燃性天然ガスなどを自家用に供する場合を除いては、鉱業権がなければ鉱物を掘採できないし、これを犯せば罰せられ、また鉱業権者であれば、他人の土地からでも鉱物を掘採でき、そのために必要な限度で他人の土地を使用することも許される。鉱業権の譲渡その他の権利の変動は、鉱業原簿へ登録することによって効力を生じる。なお、鉱業権者は、権利取得後6か月以内に事業に着手し、法に従って鉱業を営み、鉱区税、鉱産税を納めなければならない。
[宮田三郎]
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