日本大百科全書(ニッポニカ) 「ワシントン大学」の意味・わかりやすい解説
ワシントン大学
わしんとんだいがく
University of Washington
アメリカ合衆国ワシントン州にある州立の総合研究大学。シアトル、タコマ、ボセルBothellの3か所にキャンパスがある。アメリカ西海岸で2番目に設立された古い大学であり、北西部ではもっとも規模が大きい名門校と評価される。なお、同州にはワシントン州立大学Washington State Universityもあるが、本校とは別の大学である。
ワシントン大学は、1861年すなわちワシントンが州になる以前に創設された、アメリカ西海岸でもっとも古い州立総合大学の一つである。ワシントン州が成立した1889年には、すでに学生数が増大し、初期のキャンパスでは土地が足りなくなっていたため、1895年に現在のシアトル・キャンパスに最初に建てられた校舎であるデニーホールDenny Hallで講義が行われるようになった。
1909年、ワシントン大学は「アラスカ州-ユーコン州-太平洋世界博覧会」(ユーコン州はカナダ)の開催地となったが、これが大学としての新しい幕開けとなり、全米の注目を集めるようになった。第二次世界大戦以降は、研究成果とそれが支える大学院プログラムへの評価が高まり、国際的な名声を得るようになった。現在も、ワシントン大学の大学院プログラムは、全米内できわめて高い評価を得ている。ワシントン大学には、学部と大学院が合計17あるが、大学院のなかでもっとも人気が高いのは文理学部の大学院the College of Arts and Sciencesである。次に人気が高いのは、工学、ビジネス、教育、公衆衛生や医学などである。その研究熱心な姿勢は、連邦政府などからの助成金の額にも表れている。たとえば、2002年には、公私含めて8億ドル以上の助成金や研究教育への支援のための契約を受託しており、1969年以来、連邦政府の表彰を受ける国内で上位の5大学(トップ5)のなかに入っている。また、1974年以来連続して、教育研究のための連邦政府支援を受けている国内ナンバーワンの公立大学ともいえる。こうした大学での研究は、工学、森林学、航空宇宙産業、海洋科学、健康科学など、あらゆる分野において地域の主要な産業となり、地域経済を活性化させている。
ワシントン大学は、地理的観点および人口動態の観点から、高等教育の機会を拡大するために、1990年シアトル近郊に新しい2つのキャンパス、ボセル校とタコマ校を開設した。二つのキャンパスは、いずれも最初の2年間の大学教育を終えている学生と、修士課程修了の候補者用のプログラムを提供している。双方とも、昼夜間のクラスと週末のクラスを開講している。
全体の学生数は4万2974人、そのうちシアトル・キャンパスに3万9251人(学士課程2万5469人、大学院・専門職大学院1万1763人、その他短期留学生などが2019人)、教職員数は2万7600人(2005年度)。
[小島佐恵子]