地方自治体(地方政府)が設置した大学をいう。世界的に見ても,アメリカのニューヨーク市立大学やイタリアのヴァッレ・ダオスタ特別自治州立大学のように,地方自治体が大学を設置する例は少なくない。日本では,1918年に大学令(大正7年勅令第388号)により公立大学の設立が認められ,第2次世界大戦後も学校教育法(昭和22年法律第26号)の下で,地方自治体が大学を設置できることとされた。2004年度以降は,公立大学法人(日本)への移行が可能となっている。
公立大学の数は,戦後しばらく30~40校程度で推移していたが,平成に入る頃から新設が続き,1989年(平成1)の39校(学生数約6万人)から2016年の91校(同約15万人)へと2倍以上に増加した(学校基本調査)。この背景には,地方自治体の要望に応じて旧自治省が公立大学の設置抑制策を転換したことなどがあるとされている。地方自治体が大学を設置する目的としては,地元の若者の進学先の確保,地域に必要な人材の養成,地域活性化等が挙げられる。公立大学は小規模な単科大学または2学部のみの大学が多く,近年では医療看護,産業デザイン等の学部が目立つ。地域社会が必要とする人材の分野を反映しているといえる。地方分権の時代を迎え,地方自治体がつくった大学として,いかに地域に貢献していけるのかが問われている。最近では,公設民営大学を中心に,定員割れに悩む地方の私立大学が公立大学に移行する動きが目を引く。
著者: 寺倉憲一
出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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