改訂新版 世界大百科事典 「ワルタリ」の意味・わかりやすい解説
ワルタリ
Mika Toimi Waltari
生没年:1908-79
フィンランドの作家。父は大学の宗教学講師。神学,文学を学びながら17歳で宗教的作品によって文壇に登場。大学3年時に遊学先のパリから書き送った《大きな幻想》(1928)が出世作となった。〈火を掲げる者〉グループの作家らしく,かすかなロマンティシズムとリアリズムで青年の苦悩を描いている。ドラマティックな心理小説や風刺小説を残したが,長編歴史小説で国際的名声を得た。古代エジプトを背景に社会の破滅に立ち向かい失意に陥る医師を主人公にした《エジプト人シヌへ》(1945)は,第2次大戦後の人間不信の世相下,多くの人々の心をいやした。ほかに5作品が世界的ベストセラーとなった。純文学と大衆小説との間のいわゆる中間小説だが,自由,人間性,寛容性尊重の気風が全作品の底に流れている。およそ文学のすべてのジャンルに作品を残し,その著書80以上に及ぶ。フィンランド・アカデミー会員。
執筆者:高橋 静男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報