日本大百科全書(ニッポニカ) 「ワークソング」の意味・わかりやすい解説
ワークソング
わーくそんぐ
work song
一般に農耕や漁労などの作業に伴ってうたわれる歌をさすが、とくに、18~19世紀のアメリカ合衆国南部のプランテーション(大土地所有に基づく大規模農園)や小作農地における、アフリカ系アメリカ人による作業歌をさすことが多い。いずれの場合も、ワークソングを歌うことによって、働き手は作業の単調さをまぎらわせたり、作業のリズムを整えたり、効率を高めたりするものと考えられる。
アフリカ系アメリカ人のワークソングは、集団によって、楽器伴奏なしで歌われることが多かった。歌詞はふつう即興的につくられ、リーダーが「問いかけ」の歌詞を歌うと、それに対し、ほかの働き手たちが「応答」の歌詞をコーラスで歌い返すという、コール・アンド・レスポンス形式をとることが一般的であった。その際、よびかけや感嘆のことばについては、シャウトshoutやハラーhollerなど大声で叫ぶ唱法が多用された。これらの歌唱形式や唱法はいずれも、西アフリカ音楽の影響を色濃く残している。
その後、プランテーションの解体に伴って、ワークソングが歌われる機会も急速に減少していったが、合衆国南部の刑務所の農場では、1950年代まで歌い継がれていたという記録がある。ワークソング、とりわけそのコール・アンド・レスポンス形式とハラー唱法は、19世紀末におけるブルースの成立に少なからぬ影響を与えた。
[山田陽一]