音頭(読み)オンド

デジタル大辞泉 「音頭」の意味・読み・例文・類語

おん‐ど【音頭】

《「おんどう」の音変化》
多人数で歌うとき、まず一人が歌いだして調子をとること。また、その人。
多人数が歌につれて踊ること。また、その踊り・歌。「東京音頭
人の先に立って、物事をすること。また、その人。
雅楽で、各管楽器の首席奏者。

おん‐どう【音頭】

《「おんとう」とも》「おんど(音頭)」に同じ。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「音頭」の意味・読み・例文・類語

おん‐ど【音頭】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「おんどう(音頭)」の変化した語 )
  2. 雅楽の合奏で各管楽器の首席奏者。また、西洋音楽の指揮者。
    1. [初出の実例]「楽工一隊〈略〉音頭は壇上にありて、其節奏を令す」(出典:米欧回覧実記(1877)〈久米邦武〉一)
  3. おおぜいでうたうときなどに、調子をそろえるために、先にうたいだして調子をとり、みちびくこと。また、その人。音頭取り。〔日葡辞書(1603‐04)〕
    1. [初出の実例]「諸行無常とをんどをあげば、是生滅法と付てひけ」(出典:浄瑠璃・用明天皇職人鑑(1705)三)
  4. おおぜいが歌曲につれて踊ること。また、その歌曲。
    1. [初出の実例]「ひったもの・下手な音頭めさりとては」(出典:雑俳・軽口頓作(1709))
  5. 他の人の先に立って物事をすること。また、その人。音頭取り。
    1. [初出の実例]「きはまった・禿げのおんどで講参り」(出典:雑俳・削かけ(1713))
  6. 中世、猿楽などで正月に行なわれた松囃子(まつばやし)というものの最初の一節。
    1. [初出の実例]「少々世子に問う。をんどの節、祝言に直(すぐ)成べし」(出典:申楽談儀(1430)松囃子の事)
  7. 長唄、常磐津、清元などで、一定の旋律をリズミカルに反復する曲節。また、歌舞伎陰囃子(かげばやし)で、おもに殺しの場面でうたわれる曲種。

おん‐どう【音頭】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「おんとう」とも ) =おんど(音頭)
    1. [初出の実例]「其中円全闍梨為音頭」(出典:兵範記‐仁安二年(1167)九月二四日)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「音頭」の意味・わかりやすい解説

音頭 (おんど)

日本音楽の用語。〈おんどう〉ともいう。雅楽では,唐楽と高麗(こま)楽において,管楽器のそれぞれ,唐楽ならば笙(しよう),篳篥(ひちりき),竜笛(りゆうてき)の,高麗楽ならば篳篥,高麗笛の首席奏者の称。音頭は,その楽器の声部を主導し,あるいは独奏部分を担当する。音頭以外の管楽器奏者は,助管などという。同じく雅楽の弦楽器や歌の声部にも同様の役と事柄とがあり,声明(しようみよう)などにもあるが,それらに対して〈音頭〉の語を用いることはあまりなく,それぞれ固有の名称で呼ばれる。それに対し民謡や民俗芸能では,1人の主唱者と複数の唱和者によって歌われる曲がある場合,その主唱者,その独唱部分を音頭と称する。また,そういう形式そのものも音頭ということがあるが,現在では〈音頭-同形式〉などといって,混乱を避けている。この形で歌われる民謡には,《秩父音頭》や《河内音頭》のように〈なになに音頭〉という題名で呼ばれるものが多い。ただし,いわゆる新民謡には,〈音頭-同形式〉ではないにもかかわらず,曲名にこの語を用いているものがある。そのほか近世邦楽には,〈音頭〉と称する部分を備えた曲がある。それには,民謡の《伊勢音頭》の旋律を取り入れたものと,比較的素朴でリズミカルな旋律にのせて民謡風の詞章をうたうものとの2種がある。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「音頭」の意味・わかりやすい解説

音頭
おんど

(1)雅楽における各楽器、とくに篳篥(ひちりき)・竜笛(りゅうてき)(横笛(おうてき))・笙(しょう)の三管の主奏者、および声明(しょうみょう)における主唱者をいう。元来長老格の者があたり、合奏・合唱の主導的役割を果たす。これに対し他の者を「助音(じょいん)」という。一般に雅楽の楽曲では竜笛の音頭の独奏で始まり、「助音付所(つけどころ)」から合奏、最後は各管の音頭で「止め手」を奏すことが慣習化している。「音取(ねとり)」や「残楽(のこりがく)」は三管の音頭と琵琶(びわ)・箏(そう)で合奏され各楽器の妙技が競われる。声明では単に「頭(とう)」ともいう。音頭の独唱で始まり、「付所」から斉唱。楽器の伴奏がある場合もここで加わる。

[橋本曜子]

(2)日本民謡の演奏方法の名称の一つ。声明が音頭の独唱で始まり、付所の部分から複数以上の人々の斉唱が加わるところから、広く掛合い形式の唄(うた)も音頭とよばれるようになった。したがって、大ぜいの人々の行動を統一させるための木遣(きやり)唄、盆踊り唄などに音頭形式のものが多く、それがそのまま曲名にもなった。『相川(あいかわ)音頭』『伊勢(いせ)音頭』『河内(かわち)音頭』などがそれである。ところが、盆踊唄のように、この曲名には歌って踊るものが多いことから、大正末から始まった新民謡(創作歌謡による御当地ソング)の曲名のうち、にぎやかで踊り付きのものには「○○音頭」と命名するに至った。その代表曲が『東京音頭』である。

[竹内 勉]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「音頭」の意味・わかりやすい解説

音頭【おんど】

日本民謡の曲種およびその演奏形式など。雅楽の音頭(おんどう)に由来。最初の句を一人が歌い出し,その他の人びとが続いて歌う掛合いの形式,その形式の曲,その独唱者,その最初の句などをさす。多くの盆踊歌木遣(きや)りなどがこの形をもつが,秋田音頭,秩父音頭,伊勢音頭などが有名。また最初に歌い出すことを〈音頭を取る〉,歌い出す人を〈音頭取り〉ともいう。

音頭【おんどう】

日本音楽用語。(1)雅楽の合奏において,各楽器の首席奏者をいう。弦楽器の場合には面(母)箏(おもごと),面(母)琵琶(おもびわ)ともいう。管楽器では助管,弦楽器では助弦に対する。音頭は各パートの冒頭部分をひとりで奏し,音取(ねとり)においてはパートの全部をひとりで演奏する。常にそのパート全体を統括する。(2)転じて〈おんど〉と読んで,民謡などで全体を統率する独唱者およびその独唱部分の意。さらに,独唱と斉唱とを交互に掛け合うような形式の歌謡の意ともなり,そこから三味線音楽などで,一定の旋律を反復するようなリズミカルな部分を指す語としても用いられるようになった。
→関連項目音頭竜笛

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「音頭」の意味・わかりやすい解説

音頭
おんど

民謡などで全体の進行をリードする者,またはその者が独唱する口説 (くどき) 節の名称。建築や踊りなどで,歌や掛声でこれを指揮する者を音頭取りという。江戸時代後期に口説節が流行すると,盆踊りに取入れられ,1人が独唱し,踊り手が囃子詞を斉唱するために,その歌も音頭の名で呼ばれた。もっぱら地名をつけて,河内音頭,江州音頭,伊勢音頭などと呼ぶ。明治以後に作られた新民謡でも,口説でなくともこの名をつけて呼ばれることが多い。

音頭
おんどう

(1) 雅楽の合奏において,各管楽器の首席奏者のこと。「助管 (じょかん) 」の対。「主管」ともいう。 (2) 雅楽の声楽や声明 (しょうみょう) で,曲の最初や一段の初めの部分を独唱で受持つ者。単に「頭 (とう) 」ともいい,曲種,楽曲によって「句頭」「讃頭」などともいう。雅楽の場合,笏拍子を手に持って歌うので「拍子」ともいう。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「音頭」の解説

音頭
おんど

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
初演
明治18.7(東京・桐座)

出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の音頭の言及

【村君】より

…西行が備前国児島で見聞した網漁において,一の竿を立て始めるときの呪詞を唱えた〈年高きあま人〉(《山家集》)の姿は,上記のような村君の姿を比較的よく示しているといえよう。なお村君に近似した職名としては,これも若狭国の漁村史料に見える〈多烏網の音頭〉,つまり網を操作するときの音頭とりに由来する〈音頭〉という職名をあげることができる。【保立 道久】
[民俗]
 村君(村吟味)はムラギン,ムラメギ,ムラゴミなどとも呼ばれる。…

※「音頭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、和歌山県串本町の民間発射場「スペースポート紀伊」から打ち上げる。同社は契約から打ち上げまでの期間で世界最短を目指すとし、将来的には...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android