日本音楽の用語。〈おんどう〉ともいう。雅楽では,唐楽と高麗(こま)楽において,管楽器のそれぞれ,唐楽ならば笙(しよう),篳篥(ひちりき),竜笛(りゆうてき)の,高麗楽ならば篳篥,高麗笛の首席奏者の称。音頭は,その楽器の声部を主導し,あるいは独奏部分を担当する。音頭以外の管楽器奏者は,助管などという。同じく雅楽の弦楽器や歌の声部にも同様の役と事柄とがあり,声明(しようみよう)などにもあるが,それらに対して〈音頭〉の語を用いることはあまりなく,それぞれ固有の名称で呼ばれる。それに対し民謡や民俗芸能では,1人の主唱者と複数の唱和者によって歌われる曲がある場合,その主唱者,その独唱部分を音頭と称する。また,そういう形式そのものも音頭ということがあるが,現在では〈音頭-同形式〉などといって,混乱を避けている。この形で歌われる民謡には,《秩父音頭》や《河内音頭》のように〈なになに音頭〉という題名で呼ばれるものが多い。ただし,いわゆる新民謡には,〈音頭-同形式〉ではないにもかかわらず,曲名にこの語を用いているものがある。そのほか近世邦楽には,〈音頭〉と称する部分を備えた曲がある。それには,民謡の《伊勢音頭》の旋律を取り入れたものと,比較的素朴でリズミカルな旋律にのせて民謡風の詞章をうたうものとの2種がある。
執筆者:蒲生 郷昭
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(1)雅楽における各楽器、とくに篳篥(ひちりき)・竜笛(りゅうてき)(横笛(おうてき))・笙(しょう)の三管の主奏者、および声明(しょうみょう)における主唱者をいう。元来長老格の者があたり、合奏・合唱の主導的役割を果たす。これに対し他の者を「助音(じょいん)」という。一般に雅楽の楽曲では竜笛の音頭の独奏で始まり、「助音付所(つけどころ)」から合奏、最後は各管の音頭で「止め手」を奏すことが慣習化している。「音取(ねとり)」や「残楽(のこりがく)」は三管の音頭と琵琶(びわ)・箏(そう)で合奏され各楽器の妙技が競われる。声明では単に「頭(とう)」ともいう。音頭の独唱で始まり、「付所」から斉唱。楽器の伴奏がある場合もここで加わる。
[橋本曜子]
(2)日本民謡の演奏方法の名称の一つ。声明が音頭の独唱で始まり、付所の部分から複数以上の人々の斉唱が加わるところから、広く掛合い形式の唄(うた)も音頭とよばれるようになった。したがって、大ぜいの人々の行動を統一させるための木遣(きやり)唄、盆踊り唄などに音頭形式のものが多く、それがそのまま曲名にもなった。『相川(あいかわ)音頭』『伊勢(いせ)音頭』『河内(かわち)音頭』などがそれである。ところが、盆踊唄のように、この曲名には歌って踊るものが多いことから、大正末から始まった新民謡(創作歌謡による御当地ソング)の曲名のうち、にぎやかで踊り付きのものには「○○音頭」と命名するに至った。その代表曲が『東京音頭』である。
[竹内 勉]
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出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報
…西行が備前国児島で見聞した網漁において,一の竿を立て始めるときの呪詞を唱えた〈年高きあま人〉(《山家集》)の姿は,上記のような村君の姿を比較的よく示しているといえよう。なお村君に近似した職名としては,これも若狭国の漁村史料に見える〈多烏網の音頭〉,つまり網を操作するときの音頭とりに由来する〈音頭〉という職名をあげることができる。【保立 道久】
[民俗]
村君(村吟味)はムラギン,ムラメギ,ムラゴミなどとも呼ばれる。…
※「音頭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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