アブド・アルマリク(その他表記)‘Abd al-Malik

山川 世界史小辞典 改訂新版 「アブド・アルマリク」の解説

アブド・アルマリク
‘Abd al-Malik

646/647~705(在位685~705)

ウマイヤ朝第5代カリフ。父マルワーンのあとを継いで第2次内乱を終息に導く。その治世ではイラク総督ハッジャージュ・ブン・ユースフを重用し,イラクに対するシリア軍の支配を強化した。また財政用語をアラビア語に統一し,コーラン章句を刻印した独自の金貨を本格的に発行するなど行政中央集権化を推し進め,ウマイヤ朝繁栄の実質的な基礎を築き上げた。

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旺文社世界史事典 三訂版 「アブド・アルマリク」の解説

アブド=アルマリク
‘Abd al-Malik bn Marwān

646〜705
ウマイヤ朝第5代カリフ(在位685〜705)
中央集権を強化し,アラビア語の公用語化や,貨幣の鋳造を行った。また異民族改宗者(マワーリー)にジズヤ人頭税)・ハラージュ地租)を課し,ウマイヤ朝のアラブ至上主義を押し進めた。外征においては,ヘラクレイオス朝ビザンツ帝国を破り,北アフリカを占領するなど帝国領土の拡大に成功した。

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世界大百科事典(旧版)内のアブド・アルマリクの言及

【岩のドーム】より

…エルサレムのかつてユダヤ教やキリスト教の聖域でもあった所に建てられた特異な宗教建築。685∥686または687∥688年から691∥692年にウマイヤ朝カリフ,アブド・アルマリクの命により建立。八角形プランの聖殿内部では,中央に置かれた巨石の周囲を歩廊が二重に取り巻いている。…

【ウマイヤ朝】より

…その没後,フサインカルバラーでの戦死を経て,683年にはメッカのイブン・アッズバイルがカリフと称し,685年クーファではムフタールの乱があり,同朝は存亡の危機に陥った。これを第2次内乱(683‐692)というが,第5代カリフのアブド・アルマリク‘Abd al‐Malik(646∥647‐705。在位685‐705)は,これらを平定して帝国を再建した。…

【駅伝制】より

…【長谷川 博隆】
[イスラム社会]
 イスラム社会の駅伝制はバリードbarīdと呼ばれる。ウマイヤ朝の初代カリフ,ムアーウィヤ1世(在位661‐680)がササン朝ペルシアやビザンティン帝国の駅伝制を踏襲し,第2次内乱(683‐692)を平定した第5代カリフ,アブド・アルマリク(在位685‐705)はこれを組織化して帝国統治のかなめとした。アッバース朝時代になるとバリードはさらに重要な政府機関となり,第2代カリフ,マンスール(在位754‐775)はバグダードに駅伝庁dīwān al‐barīdを設置するとともに,地方の主都にも駅伝局を置いてそれぞれに腹心の部下を配した。…

【エルサレム】より

…同市は初めアエリアからきたアラビア語でイーリーヤとも呼ばれたが,やがて〈聖なる家〉al‐Bayt al‐Muqaddas,Bayt al‐Maqdis(クドスはこれらを簡略にした形)と呼ばれるようになった。ムアーウィヤ1世が同市でカリフたることを宣言しウマイヤ朝を開いた後,アクサー・モスクの前身にあたるモスクが建造され,さらに第5代カリフ,アブド・アルマリク(在位685‐705)は問題の岩を中心に据える岩のドームを建立した(691完成)。こうしてウマイヤ朝のもとで,ハラム・アッシャリーフが形を整えることとなった。…

【ディーナール】より

…ローマ世界で用いられたデナリウス貨に由来する。最も古いディーナール金貨は,ウマイヤ朝のアブド・アルマリク(在位685‐705)時代にダマスクスで鋳造された。その後,エジプト,ヒジャーズ,チュニジア,スペインにも造幣所がつくられた。…

【ディルハム】より

…金貨の単位であるディーナールとの換算比率は,1ディーナール=10ディルハムが法的標準のはずであるが,実際は時代,地域によって大きな変動があり,極端な場合には1ディーナール=30ディルハム以上ということもあった。ディルハム銀貨は最初,ササン朝のものをまねてつくられたが,ウマイヤ朝のアブド・アルマリク(在位685‐705)時代にイスラム独自の銘だけのものが鋳造され,その型がだいたい踏襲された。ディーナール金貨が主として旧ビザンティン領で使われたのに対し,イラク,ペルシアでは,ディルハム銀貨が流通した。…

【マルワーン家】より

…685年,シリアの反ウマイヤ家で,メッカのカリフ,イブン・アッズバイルに従う勢力をマルジュ・ラーヒトの戦で一掃し,シリアでのウマイヤ家の地位を再確立し,没した。 子のアブド・アルマリク‘Abd al‐Malik(在位685‐705)は第5代カリフとして父の事業を継承し,第2次内乱を終結させウマイヤ朝存亡の危機を救った。第8代のウマル2世と第14代のマルワーン2世を除くと,すべてアブド・アルマリクの子孫がカリフ位を継承したが,その2者ともマルワーンの子孫であるので,マルワーン以後のウマイヤ朝をスフヤーン家出身の前3代と対照的にマルワーン朝と呼んでさしつかえない。…

※「アブド・アルマリク」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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