アミン(Samir Amin)(読み)あみん(英語表記)Samir Amin

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

アミン(Samir Amin)
あみん
Samir Amin
(1931― )

エジプト出身の経済学者。A・G・フランクとともに新従属学派の代表的理論家として知られている。パリで経済学を学んだのち、1957年よりエジプト政府の開発経済機関に勤務したが、1960年ナセル政権によりエジプトを追われ、マリ共和国政府の経済顧問、フランス、セネガルの諸大学教授を経て、1970年からセネガルのダカールにある国連アフリカ経済開発・経済計画研究所所長。1980年以降同研究所を離れ、同じくダカールにあるNGO(非政府組織)「第三世界フォーラム」の代表となり、1996年からは世界を代表する政・官・財界のトップたちによるグローバル化、IT(情報技術)化の潮流に沿った国際協調を目ざす「世界経済フォーラム」(スイス・ダボス)の対抗会議である「オルターナティブ世界フォーラム」(「第三世界フォーラム」主催)の議長も務めている。問題関心の重点を、第三世界(とくにアラブとアフリカ)の具体的分析から、世界的規模での資本蓄積の理論へ、さらに唯物史観の再解釈や民族問題に移してきているが、その間、一貫して伝統的社会科学、経済学の西欧中心主義を批判し、自らは、第三世界に主軸を置いた政治経済理論の再構築を図っている。主著の『世界的規模における資本蓄積』(1970)のほか、『不均等発展』(1973)、『帝国主義と不均等発展』(1976)、『価値法則と史的唯物論』(1977)、『デリンキング――多中心的世界に向けて』(1985)などがよく知られている。

[本多健吉]

『野口祐他訳『世界的規模における資本蓄積』全3冊(1979~1981・柘植書房)』『北沢正雄訳『帝国主義と不均等発展』(1981・第三書館)』『西川潤訳『不均等発展――周辺資本主義の社会構成体に関する試論』(1983・東洋経済新報社)』『北沢正雄訳『価値法則と史的唯物論』(1983・亜紀書房)』『渡辺政治経済研究所編、脇浜義明監訳『オルタナティブな社会主義へ――スイージーとアミン、未来を語る』(1990・新泉社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android