アルギニンリン酸(読み)あるぎにんりんさん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルギニンリン酸」の意味・わかりやすい解説

アルギニンリン酸
あるぎにんりんさん

アルギニングアニジン基リン酸エステル結合した化合物。化学式はのようになる。加水分解によりATPアデノシン三リン酸)と同等のエネルギーを遊離する高エネルギーリン酸化合物の一つである。

 解糖作用などでつくられたATPは、このようなリン酸化合物(フォスファーゲン)として蓄えられ、必要に応じてATPに戻すことができる。

 ATP+アルギニン
  ADP+アルギニンリン酸
筋肉収縮など一度に多くのATPを必要とする場合、ATPが消費され尽くしてもフォスファーゲンからATPを再生して、しばらくはエネルギーの補給が続くようになっている。アルギニンリン酸は多くの無脊椎動物(むせきついどうぶつ)のフォスファーゲンの役割をしている。脊椎動物ではクレアチンリン酸がフォスファーゲンであり、この2群の中間にあたる棘皮動物(きょくひどうぶつ)ではアルギニンリン酸とクレアチンリン酸が共存している。たとえばウニ(棘皮動物)では、成長していくにつれてアルギニンリン酸の量が減り、クレアチンリン酸の量が増えていく。原索動物の場合は、フォスファーゲンとしてアルギニンリン酸を使うものとクレアチンリン酸を使うものが、種によって分かれている。

[菊池韶彦]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アルギニンリン酸」の意味・わかりやすい解説

アルギニンリン酸
アルギニンリンさん
arginine phosphate

グアニジンリン酸化合物の一つで,いわゆるホスファゲンうち,クレアチンリン酸と並んで代表的なもの。クレアチンリン酸が脊椎動物に広く分布し,無脊椎動物でも棘皮動物や環形動物にはある程度見出されるのに対し,アルギニンリン酸は無脊椎動物に限って見出される。このことと,両者生成に関与する酵素であるクレアチンキナーゼとアルギニンキナーゼの比較から,アルギニンリン酸のほうが,進化においてより初期のホスファゲンの形態であると考えられる。

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