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アルテ・ポーベラ Arte Povera

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

アルテ・ポーベラ
Arte Povera

現代美術用語。「貧しい芸術」の意味。 1960年代後半にイタリアで顕著になった美術の動向の一つで,イタリアの評論家 G.チェラントの命名によるもの。現代の技術社会で最も素朴で見捨てられているような素材を用いた作品をさすが,アースワークコンセプチュアル・アートなどと重複する面もある。

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百科事典マイペディアの解説

アルテ・ポーベラ

批評家ジェルマーノ・チェラントが用いた〈貧しい芸術〉という意味の用語で,1960年代後半にイタリアで始まった美術の動向を指す。新聞やセメント,布など身の回りの素材を用い,既存の彫刻の概念を逸脱した作品を制作する作家たちが登場した。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

アルテ・ポーベラ
あるてぽーべら
arte povera

1960年代後半に、ローマ、ミラノ、トリノなどイタリアの都市部を中心に興隆した芸術運動。木材、鉄材、水、土、植物、ゴム、セメント、日用品、工業製品などの身近な物質・資材を用いて立体を制作することを特徴とする。「アルテ・ポーベラ」は直訳すれば「貧しい芸術」の意味だが、「ポーベラ」というイタリア語には「質素な、簡素な」という意味もあり、この用語にも当然そうした意味が込められている。代表的な作家としてはアリギエロ・ボエッティAlighiero Boetti(1940―1994)、ピーノ・パスカーリPino Pascali(1936―1968)、ヤニス・クネリスJannis Kounellis(1936―2017)、マリオ・メルツMario Merz(1925―2003)、ルチアーノ・ファブロLuciano Fabro(1936―2007)、ミケランジェロ・ピストレットMichelangelo Pistoletto(1933― )、ジルベルト・ゾリオGilberto Zorio(1944― )、ジョバンニ・アンセルモGiovanni Anselmo(1934― )などがあげられ、この運動にかかわった作家は「ポーベリスタ」と総称される。
 「アルテ・ポーベラ」という名は1967年、ジェノバのベルテスカ画廊でボエッティ、パスカーリ、クネリス、ファブロ、メルツらのグループ展を主催した批評家ジェルマーノ・チェラントGermano Celant(1940― )が、彼らの作品の特徴を指摘するために用いたことに由来する。以後短期間のうちにその名は定着していく。1969年、チェラントは自らの考えを『アルテ・ポーベラ』Arte Povera; Groupe de Recherche d'Arts Visuelsと題した書物にまとめて、ミラノで刊行した。
 第二次世界大戦後のイタリア美術においては、1950年代のスパツィアリスモ(空間主義。1950年代初頭にルーチョ・フォンタナが提唱。四次元的な表現を目ざす)や1980年代のトランスアバングァルディアと並ぶ重要な運動だが、「アルテ・ポーベラ」の場合は、工業化社会に対する反発、反芸術的気風の継承、自然回帰志向や反テクノロジー志向など、1960年代という時勢と深い結びつきがある。彼らは身近な素材を活用し日常的な経験を強調する一方、有用性や華美、過剰な表現を排除した。1968年フランスの五月革命に象徴される、当時のヨーロッパのユートピア的な社会主義思潮に共感を寄せる彼らの作品の傾向を「アルテ・ポーベラ」という名は正確に指摘していた。運動の及んだ範囲はほぼイタリア一国に限られていたが、1969年に開催された「丸い穴の四角い札」(アムステルダム市立美術館)と「態度が形式になるとき」(ベルン市立美術館)という展覧会を通じて、「アルテ・ポーベラ」の名は国外でも知られるようになる。フランスの「シュポール/シュルファス」や日本の「もの派」といった他国の動向と同様に、この運動はミニマリズムのなかに位置づけられた。運動そのものは短命に終わり、また主要作家の多くは1970年代以降はコンセプチュアル・アートへと移行していくのだが、この運動の重要性が損なわれることはなかった。[暮沢剛巳]
『Germano Celant Arte Povera (1969, Gabriele Mazzotta, Milano) ▽「20世紀イタリア美術」(カタログ。2001・東京都現代美術館)』

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