副腎(ふくじん)皮質ホルモンの一種であるアルドステロンが大量に分泌されるためにおこる疾患。1955年に初めてこの病気を記載した発見者の名をとってコーンConn症候群ともよばれる。アルドステロンは腎臓に作用してナトリウムの再吸収およびカリウムの排泄(はいせつ)を促進させるので、大量に分泌されるとナトリウムや水が体内に貯留して高血圧となり、血清カリウムが低下する。また、血液のpH(酸塩基平衡)がアルカリ側に偏り代謝性アルカローシスとなる。したがって症状としては、高血圧のほか、低カリウム血症による多飲や多尿、発作的に数時間手足が動かなくなる周期性四肢麻痺(まひ)をおこしたり、代謝性アルカローシスによって手指が曲がったまま動かなくなるテタニー発作をおこすことがある。長期間放置すると、心不全を引き起こす。原因は副腎にできる腫瘍(しゅよう)による場合がもっとも多く、普通は良性の副腎腺腫(せんしゅ)で、副腎癌(がん)によるものはまれである。女性に多く、男性の2倍である。年齢的には30代にもっとも多く、ついで40代、両者で80%を占める。ほかに両側の副腎にみられる過形成(組織を構成する成分が増加し、その組織や臓器が大きくなること)によるものがある。診断にはアルドステロンの血中濃度上昇、血漿(けっしょう)レニン活性の低下、低カリウム血症、代謝性アルカローシスをはじめ、諸種の負荷テストを行い、血中レニン活性が上昇しない点を証明することが必要である。また、腫瘍の部位を決めるためには、腹部CT(コンピュータ断層撮影)、アイソトープを使った副腎シンチグラフィあるいは、副腎静脈にカテーテルを入れて静脈サンプリングを行う。治療は手術(腹腔(ふくくう)鏡手術が可能となっている)によって腺腫を摘出するのがもっともよい。過形成によるものは再発しやすい。
[高野加寿恵]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…アルドステロンは,前者に属する最も強力なホルモンであり,おもに腎臓の尿細管でのNa+再吸収とそれに伴う水分吸収,およびNa+と交換的なK+と水素イオンH+の排出を促進する。したがって,アルドステロン過剰の状態たとえば原発性アルドステロン症では,ナトリウムと水分が過剰に吸収され,貯留する結果,浮腫(むくみ,水腫),高血圧,心不全,ネフローゼ等をおこす。この場合の治療薬には,アルドステロンに拮抗する合成ステロイドのスピロノラクトンが使用されるが,これはカリウム喪失を伴わない良い利尿薬である。…
…また,副腎結核や特発性副腎皮質萎縮により,副腎からのコルチゾールの分泌が低下するとアディソン病となる。副腎腺腫から多量のアルドステロンが分泌されると,原発性アルドステロン症となる。【関原 久彦】
[副腎皮質ホルモン剤]
ホルモン剤としては,一般に糖質コルチコイドと鉱質コルチコイドをさす。…
※「アルドステロン症」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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