アワヨトウ(その他表記)Pseudaletia separata

改訂新版 世界大百科事典 「アワヨトウ」の意味・わかりやすい解説

アワヨトウ
Pseudaletia separata

鱗翅目ヤガ科の昆虫イネ科の作物牧草などの害虫として著名。和名アワを食べるヨトウムシの意。開張4cm内外。体および前翅は黄灰色ないし黄褐色オーストラリアニュージーランドから東南アジア,インド,中国,日本にわたって広く分布東アジアでは,春中国南部で発生するものが,数回の発生を繰り返しつつ北上して中国東北部に達し,秋に再び南下する往復移動を行うことが知られている。その流れは海を越えて日本にも達し,絶えず大陸から補給されていると推定され,秋に向かって東北地方でも発生量を増し,造成した牧草地に被害が出る。ヨーロッパと北アメリカに近縁種P.unipunctaを産し,1950年以前にはアワヨトウと同種として扱われていた。欧米でこの幼虫army wormと呼ぶのは,大発生時に圃場(ほじよう)を食いつくしに幼虫が集団で地表を移動することに由来する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アワヨトウ」の意味・わかりやすい解説

アワヨトウ
あわよとう / 粟夜盗
Oriental armyworm moth
[学] Pseudaletia separata

昆虫綱鱗翅(りんし)目ヤガ科に属するガ。はねの開張は40ミリメートル内外で、前翅は黄褐色を帯びる。全世界に多数の種を含むキヨトウ(黄夜盗)群の1種。ヨーロッパと北アメリカに産する近縁種armyworm moth/P. unipunctaとともに、イネ、アワ、ムギ、トウモロコシなど各種の農作物の著名な害虫として知られている。本種はアジア一帯のほか、オーストラリア、ニュージーランドにわたって分布する。最近ではむしろ造成牧草地などの被害が注目されている。本種については、中国で行われた広範な成虫個体群の移動に関する研究がよく知られ、1~2月に中国南部で羽化したガは北方に向かい、途中各地で繁殖を続けて中国東北部に達し、秋にはふたたび南下し、この間、計5世代を経るという。この調査ではマーキング法による再捕獲実験も行われた。日本でもこの余波を受けて年々大陸からの進入があり、一定の気象条件のもとで着地したとき大発生が生じ、東北地方の牧草地にその被害例が多い。

[杉 繁郎]

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百科事典マイペディア 「アワヨトウ」の意味・わかりやすい解説

アワヨトウ

鱗翅(りんし)目ヤガ科の1種。地味な灰黄色のガで,開張40mm内外。幼虫はイネ,ムギ,アワなどイネ科植物の葉を食べる害虫。昼間は根ぎわに潜み,夜間活動する。幼虫で越冬。成虫は年数回発生,時に大発生する。分布は日本全土のほか,ほとんど全世界。
→関連項目ヤガ(夜蛾)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アワヨトウ」の意味・わかりやすい解説

アワヨトウ
Leucania separata

鱗翅目ヤガ科。前翅長 18mm内外。前翅は細く先端はややとがり,灰褐色地に暗色鱗が散在し,また先端から斜めに線状にも並ぶ。後翅は暗灰色。年に数回発生する。日本各地に普通で,アワ,イネ,ムギなどに害を与える。東アジアからフィリピン,インドネシア,オーストラリアに広く分布する。

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