インドの伝承医学。アーユルは長寿、ベーダは知識という意味で、生命(健康)の科学である。発祥はおよそ3000年前で、四つのベーダのうちもっとも新しい『アタルバ・ベーダ』Atharva-vedaのなかには数多くの医薬が登場する。その後、サーンキヤSāmkyaをはじめとする哲学の影響を受け、呪術(じゅじゅつ)医学から脱却し、紀元前500年ごろに合理経験医学として完成された。『アーユルベーダ』では三つのドーシャDosá、すなわちバーユVāyu(風)、ピッタPitta(熱)、カパKapha(冷)の均衡が保たれているときは健康であるとし、生薬などによって均衡を図るのが治療の原則で、医師は食事指導を第一とする。現在インドでは100を超す5年制の大学でこれの教育と研究が行われており、卒業と同時にバイディヤVaidyaの称号が与えられ、西洋医とともにインド医療の担い手となっている。
[幡井 勉]
『大地原誠玄訳稿『スシュルタ本集』(1971・臨川書店)』▽『クトムビア著、幡井勉・坂本守正訳『古代インド医学』(1980・出版科学総合研究所)』▽『J・F・ダスター著、伊藤和洋訳編『インドの自然療法――アユルベーダ医学の実際』(1982・本郷企画)』
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