イスラーム美術

山川 世界史小辞典 改訂新版 「イスラーム美術」の解説

イスラーム美術(イスラームびじゅつ)

イスラームの信仰を反映する独特の様式を持った美術の総称。建築はモスク宮殿などに最もみるべきものが多いが,旧ローマ領,旧ペルシア領,インド,スペインなど,それぞれその地方の特色を受け継ぎ,変化に富む。しかし,イスラーム建築としての共通点も少なくない。人体の絵画彫刻はモスクでは禁じられたが,植物文様や幾何学文様のアラベスクが発達した。ただし,宮殿の壁画には人体を表わしたものもあったし,ことに書物のさし絵としてミニアチュール(細密画)が発達した。アラブ派とイラン派では画風が違うが,イランの細密画は15世紀には黄金時代を示し,インドやトルコもその影響を受けた。コーラン写経を中心に,アラビア文字書道が発達した。その他,装丁美術,陶磁器,建築用タイル,木や象牙金属などの諸種の細工,カーペットなど多方面に及ぶ。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

旺文社世界史事典 三訂版 「イスラーム美術」の解説

イスラーム美術
イスラームびじゅつ

ササン朝・ビザンツ帝国の伝統を継承したイスラーム圏の美術
イスラームでは偶像崇拝が禁じられたので,ミニアチュールを除き,彫刻・絵画がみられず,その代わりにアラベスクによって全体を装飾した。分野別にみれば,建築におけるモスクや宮殿,工芸では金属の象嵌 (ぞうがん) ・絨毯 (じゆうたん) ・陶器・製本にすぐれ,13世紀以降,中国絵画の影響もあって書物のさし絵としてのミニアチュールが見られるようになる。

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