アラベスク(読み)あらべすく(英語表記)arabesque フランス語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アラベスク」の意味・わかりやすい解説

アラベスク
あらべすく
arabesque フランス語

原意は「アラビア風の」であるが、美術用語としては、イスラム美術に広範にみられる曲線的な装飾文様をいう。とくに、つる草のような優美な植物が絡み合った唐草模様をさすことが多いが、広義には、複雑に連続する幾何学図形、文様化されたアラビア文字をも含む。さらには、イスラム美術に限定せず、曲線の多い幻想的な装飾文様すべてをさしたり、人像や鳥獣を取り入れたグロテスク文様を含めることもある。

[篠塚二三男]

 このことばは、他の芸術ジャンルにも取り入れられた。音楽では、一つの楽想を幻想的、装飾的に展開する作品の題名に用いられた。その初出は1839年出版のシューマンのピアノ小品『アラベスク・ハ長調』(作品18)である。ほかにドビュッシーのピアノ曲『二つのアラベスク』ホ長調・ト短調(1888)、ディーリアスのオーケストラ伴奏の合唱曲『アラベスク』(1911)などがある。バレエ用語としては、片足で立ち、片手を前に、他の手脚(てあし)を後ろに伸ばしたポーズをこの名でよぶ。

[関根敏子]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アラベスク」の意味・わかりやすい解説

アラベスク
arabesque

バレエ用語。アラビアの唐草模様を語源とするポーズの一つ。アダージョのゆるやかな動きや,アレグロ活気のある楽しい踊りの,一連の区切りとして使われることが多い。片脚で立ち,上げた脚をまっすぐ後方へ伸ばし,これに対向するように片腕前方に伸ばし,手の先から上げた脚の爪先まで最も長い線を形づくる。支えの脚はプリエ (膝を曲げる) の場合もある。またポアント (爪先) ,ドミ・ポアントで立つ場合とア・テール (べた足) で立つ場合とがある。このポーズは,C.ブラシスメルクリウス彫像からヒントを得て考案したといわれ,身体の構え方,脚の上げ方でいろいろ呼び名があるが,そのバランスが最も重要。アティチュードとともにクラシック・バレエで男女の区別なく随所でみられる最も特徴的,かつ代表的なポーズである。チェケッティ派には5つ,ワガノワ派には4つ,フランス派には2つの基本的なアラベスクがある。

アラベスク
arabesque

連続模様の一種。もと小アジアでギリシア・ローマ時代に使われていた植物連続文様。イスラム美術の主要な装飾モチーフとして使われて様式化が進み,独特の装飾文様として完成,イスラムの代表的な文様となった。これがルネサンス以降西洋の建築,工芸の装飾に採用されたことから,「アラビア風の」という語義をもつこの名称がつけられた。アラベスク文様は左右上下に連続することが必須条件で,そのモチーフは植物,幾何学図文に限らず,動物,人物,架空動物なども自由に使われている。とりわけ西洋のアラベスクは,人物裸像,仮面,架空動物,植物,細密な植物連続文様のイメージが強い。

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