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偶像崇拝 ぐうぞうすうはいidolatry

翻訳|idolatry

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

偶像崇拝
ぐうぞうすうはい
idolatry

ミイラ神仏像,祖先像,聖人像,獣像さらには樹木や岩石などの形象物を崇拝すること。偶像には,神,仏,超自然力などのまったく抽象的な信仰対象に具体的姿をもたせ,人々に明確な対象を与える力がある。西部アフリカのギニア海岸の bohasum,bossun,コンゴ地方の ngunde,リベリア沿岸の grigri,grugruなどは偶像あるいは呪具として用いられる。またエスキモーでは幼児の死体の日干しを袋に入れ狩猟の呪物とし,アパッチ族では雷火で焼けた木片,ヒダツァ族ではきつねやおおかみの皮などが呪物とされ,ときに偶像の一部に「腹ごもり」として収められている。この点一種の呪物崇拝をなしていると考えられる。ユダヤ教キリスト教イスラム教などは唯一神の視覚化の不可能性を強調しており,モーセはことにきびしく偶像崇拝を禁じたが,歴史的にはビザンチン・キリスト教会の聖像崇拝が偶像崇拝の嫌疑を受け,聖画像破壊運動 (→イコノクラスム ) が起るなど,唯一神が視覚化されてきた事実もある。

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百科事典マイペディアの解説

偶像崇拝【ぐうぞうすうはい】

信仰,崇拝の対象として,感覚的・具象的に描いたり,作ったりしたもの(偶像)に霊力を認めて礼拝すること。英語ではidolatry。広義フェティシズム(呪物(じゅぶつ)崇拝)と考える立場もある。

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世界大百科事典 第2版の解説

ぐうぞうすうはい【偶像崇拝 idolatry】

感覚的対象を崇拝すること。偶像は元来神像,仏像を含むが,偶像には軽蔑の意があるととられやすいために,この語の使用をさけて,〈神像崇拝〉というべきだとする学者もある。文化のきわめて未発達な狩猟採集経済の段階では感覚的事物を宗教対象とすることは少なく,文化がやや発達したところに呪物amulet(護符)や霊物fetishの崇拝が盛んになる。呪物とはその物自体に非人格的な超自然力(マナ)が宿ると考えられる物体をいい,霊物とは人格的な精霊が宿ると考えられる持運びのできる物体をいう。

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大辞林 第三版の解説

ぐうぞうすうはい【偶像崇拝】

神以外の人や物、あるいは木・土・石・金属などで造られた神仏の像や絵画を信仰の対象として崇拝すること。神を被造物と混交するものとしてユダヤ教・キリスト教・イスラム教などで厳しく否定され、他の宗教を非難する語として用いられた。 → 呪物じゆぶつ崇拝
尊重すべき実体のないものを無批判に崇拝すること。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

偶像崇拝
ぐうぞうすうはい

物質的なものが、神、祖霊、死霊などの超自然的存在の力を表象しているか、それを有しているとして、崇拝の対象にすること。偶像は、木、石、骨などの自然物を超自然的存在の形に似せて、あるいはそれを指標する形に加工されたもので、その実例としては、ほとんどの民族・文化にみられる人間形態の神像、祖先像や、古代ペルーのジャガーの彫刻などの動物形態のもの、カトリック社会の聖遺物崇拝に顕著にみられるように聖人や祖先の身体、衣服の一部を崇拝対象にしているもの、さらには、日本の神社の御神体や依代(よりしろ)である鏡や刀剣などのように、超自然的存在の形そのものではないがその表徴として文化的に規定されている形のものなど多様である。また、偶像崇拝をいっさい認めないといわれるイスラム教においても、印刷されたり筆記されたコーランの唱句の文字を神聖視するという事実があり、これも偶像崇拝の一変形と考えることもできる。
 ところで、偶像と超自然的存在の関係は、カトリックにおける十字架のように、偶像が超自然的存在の指標にすぎず、超自然的力をもたないと理論的に考えられている場合のほかに、両者の区別が明確に意識されながらも偶像に超自然的存在が宿り力をもつと信じられている場合がある。たとえば、メラネシアでは祭礼の前にマランガンとよばれる木彫の像がつくられ、祭りの間じゅう、そこに祖霊が宿ると考えられている。また、超自然的存在との媒介であるはずの偶像が、それ自体に超自然的力が備わっているとして崇拝対象になってしまう場合もある。実際、偶像と超自然的存在の関係は崇拝者の心理のなかで連続しやすく、その区別を明確にすることはむずかしい。神との直接的関係を主張する高等宗教は、とくにこの点をさして、偶像崇拝は真の信仰の退化であると蔑視(べっし)する。仏像をあれほど多く創出した仏教でも、仏を表現するには木像よりも絵像、絵像よりも名号(みょうごう)がよいといわれ、偶像崇拝の危険性を説いている。
 さて、宗教史的に、偶像崇拝に対する考え方はヨーロッパを中心に長い間否定的で、それはしばしば邪教・異教と同義であった。8世紀のビザンティン皇帝レオン3世による偶像破壊(イコノクラスム)令と東西教会の分裂や、16世紀の宗教改革は、ある意味でキリスト教圏内での偶像崇拝の可否をめぐる論議といえる。偶像崇拝は低級かつ原始的な信仰として、高等宗教であるキリスト教からは排除すべきものと強く考えられてきたのである。そして偶像崇拝が顕著な他民族の宗教を未発達なものとみなし、進化論的な宗教形態論が展開されてきた。しかしながらこれらの議論にもかかわらず、ヨーロッパにおいても偶像崇拝の土壌は否定できない。カトリック文化は、とくに4世紀ごろからキリスト像、マリア像や十字架などをつくりだしてきており、それに対する信奉は現在でも根強く続いている。
 また、進化論的な宗教形態論に対しても、E・B・タイラーをはじめとした人類学者、民俗学者による諸民族の宗教の調査と比較研究が積み重ねられた結果、偶像崇拝は文化の発展段階とは一致せず、多くの民族に存在することが明らかになった。オーストラリア先住民などのように文化がきわめて未発達で、偶像作製に適する物質にも乏しい社会ではあまりみられないが、むしろ、文明が高度化するとともに盛んになり、精細な偶像をつくるようになることも指摘された。
 現在、偶像崇拝はフェティシズム(呪物(じゅぶつ)崇拝)などの近似概念と同様に、宗教の発展の一段階としてではなく、ある民族の宗教体系の一部を構成する宗教形態として研究されている。[宇田川妙子]

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世界大百科事典内の偶像崇拝の言及

【宗教美術】より


[偶像崇拝と偶像否定]
 宗教はまず主観的な心的現象として現れるが,それは一般に客観的な共同的・社会的現象としての形をとる。そして超人間的存在に対する祈願ないし礼拝のための共同の場所が要求される。…

※「偶像崇拝」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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