改訂新版 世界大百科事典 「イソプレンゴム」の意味・わかりやすい解説
イソプレンゴム
isoprene rubber
略称IR。イソプレンを重合させて得られる合成ゴム。合成ゴムの中で最も天然ゴムに近い分子構造をもった汎用合成ゴムである。天然ゴムはほぼ純粋なシス-1,4結合のポリイソプレンである。イソプレンを重合させて天然ゴムと同じ構造のゴムを合成することは長い間,化学者の夢であったが,初期に得られたものは天然ゴムとはまったくかけ離れたものであった。1950年代になり,立体規則性重合の展開によりシス-1,4結合を90%以上含む高シス-1,4ポリイソプレンの合成が可能となったことから〈合成天然ゴム〉の出現として注目され,これらは順次イソプレンゴムとして工業生産に移された。使用する重合触媒の種類によってシス-1,4結合の純度に差があり,アルキルリチウム系触媒では93%程度,四塩化チタン・トリアルキルアルミニウム系チーグラー触媒では98%程度である。IRは分子構造的に天然ゴムにきわめてよく似ているため,その性質も天然ゴムによく似ている。しかも天然ゴムに比べて品質が一定しており,ごみなどの異物混入がない,淡色である,加工しやすいなどの特徴があり,自動車タイヤをはじめ多くのゴム製品に使用されている。
執筆者:住江 太郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報