イソプレン(読み)いそぷれん(英語表記)isoprene

翻訳|isoprene

日本大百科全書(ニッポニカ) 「イソプレン」の意味・わかりやすい解説

イソプレン
いそぷれん
isoprene

正しくは2-メチル-1,3-ブタジエンといい、共役ジエンの一つ。化学式H2C=C(CH3)-CH=CH2。天然ゴムやテレビン油テレピン油ともいう)を熱分解すると得られる。

 無色の弱い刺激臭をもつ液体。工業的にはナフサ軽油の熱分解の副生成物の一つとして得られ、また石油から得られるイソペンタン脱水、あるいはイソブテンホルムアルデヒドから、またはアセチレンアセトンから製造される。これをツィーグラー・ナッタ型の触媒を用いて重合させて、天然ゴムと同様にすべての二重結合がシス型の配置をとったポリイソプレンとし、合成天然ゴムsynthetic natural rubberとして利用する。これは高い弾性を示すが、他方イソプレンをとくに触媒を用いずに重合させた重合体は、すべての二重結合がトランス型の配置をとるため、弾性を示さない。あるいはイソブチレンと共重合させた通称ブチルゴムは二重結合を含まないため、弾性が乏しい。天然のテルペンの骨格はイソプレン単位から光合成されたと考えられている。

[徳丸克己]

『Donatas Satas編著、水町浩監訳、井上雅雄ほか訳『粘着技術ハンドブック』(1997・日刊工業新聞社)』『R・ホワイマン著、碇屋隆雄・山田徹訳『有機金属と触媒――工業プロセスへの展開』(2003・化学同人)』


イソプレン(データノート)
いそぷれんでーたのーと

イソプレン

 分子式 C5H8
 分子量 68.12
 融点  -145.95℃
 沸点  34.07℃
 比重  0.6808(測定温度20℃)
 屈折率 (n)1.42194

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イソプレン」の意味・わかりやすい解説

イソプレン
isoprene

2-メチル-1, 3-ブタジエンともいう。化学式 CH2=C(CH3)CH=CH2 。天然ゴムの構成分子であり,天然ゴムの熱分解によって得られる。また石油の分解生成物にも含まれる。合成ゴム製造の原料となる揮発性液体で,沸点 34℃。刺激臭があり,有機溶剤によく溶ける。共役ジエン特有の反応を示し,適当な触媒によりイソプレン自身の重合あるいは他の不飽和化合物と共重合させて,種々の特性をもつ合成ゴムを得ることができる。工業的には石油分解物のイソペンタンの脱水素により生産される。

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