イソプレン(読み)いそぷれん(英語表記)isoprene

翻訳|isoprene

デジタル大辞泉 「イソプレン」の意味・読み・例文・類語

イソプレン(isoprene)

天然ゴム熱分解すると得られる無色、揮発性の液体。重合させてポリイソプレンとし合成ゴムを作る。化学式CH2=C(CH3)CH=CH2

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「イソプレン」の意味・読み・例文・類語

イソプレン

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] isoprene ) 脂肪族不飽和炭化水素で天然ゴムの構成分子。化学式 C5H8 無色透明刺激臭のある揮発性液体。石油分解物からも合成される。合成ゴム、合成樹脂原料となる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「イソプレン」の意味・わかりやすい解説

イソプレン
いそぷれん
isoprene

正しくは2-メチル-1,3-ブタジエンといい、共役ジエンの一つ。化学式H2C=C(CH3)-CH=CH2。天然ゴムやテレビン油テレピン油ともいう)を熱分解すると得られる。

 無色の弱い刺激臭をもつ液体。工業的にはナフサや軽油の熱分解の副生成物の一つとして得られ、また石油から得られるイソペンタンの脱水、あるいはイソブテンホルムアルデヒドから、またはアセチレンアセトンから製造される。これをツィーグラー・ナッタ型の触媒を用いて重合させて、天然ゴムと同様にすべての二重結合がシス型の配置をとったポリイソプレンとし、合成天然ゴムsynthetic natural rubberとして利用する。これは高い弾性を示すが、他方イソプレンをとくに触媒を用いずに重合させた重合体は、すべての二重結合がトランス型の配置をとるため、弾性を示さない。あるいはイソブチレンと共重合させた通称ブチルゴムは二重結合を含まないため、弾性が乏しい。天然のテルペンの骨格はイソプレン単位から光合成されたと考えられている。

[徳丸克己]

『Donatas Satas編著、水町浩監訳、井上雅雄ほか訳『粘着技術ハンドブック』(1997・日刊工業新聞社)』『R・ホワイマン著、碇屋隆雄・山田徹訳『有機金属と触媒――工業プロセスへの展開』(2003・化学同人)』


イソプレン(データノート)
いそぷれんでーたのーと

イソプレン

 分子式 C5H8
 分子量 68.12
 融点  -145.95℃
 沸点  34.07℃
 比重  0.6808(測定温度20℃)
 屈折率 (n)1.42194

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

化学辞典 第2版 「イソプレン」の解説

イソプレン
イソプレン
isoprene

C5H8(68.12).CH2=CH(CH3)C=CH2.2-メチル-1,3-ブタジエン(2-methyl-1,3-butadiene)ともいう.脂肪族不飽和炭化水素(ジエン)の一つ.分枝メチル基共役二重結合とをもっている.天然ゴムの構成単位であり,石油系炭化水素の分解ガス中にも含まれる.製法は,天然ゴム,テレビン油などを熱分解して得られる.工業的には,石油系炭化水素の熱分解により,エテンを製造する際に副生する C5 留分から,抽出蒸留により分離する方法,イソペンテンを脱水素する方法,イソブテンとホルムアルデヒド脱水縮合する方法などがある.構造はブタジエンの内部炭素に結合している水素の一つをメチル基で置換した構造をもつ.無色のやや刺激臭のある揮発性の液体.融点-145.95 ℃,沸点34.07 ℃.0.67587.1.41852.各種有機溶剤に可溶,水に不溶.共役ジエンとしてブタジエンと同様の化学反応性を示し,石油化学工業における重要な炭化水素中間体の一つ.おもな用途はイソプレンゴム(cis-1,4-ポリイソプレン),ブチルゴムなどの合成ゴム原料,およびファインケミカル用合成原料である.[CAS 78-79-5]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「イソプレン」の意味・わかりやすい解説

イソプレン
isoprene



二重結合を二つもつ脂肪族鎖式不飽和炭化水素(ジオレフィン,鎖式ジエン)の一つ。IUPAC命名法では2-メチル-1,3-ブタジエン。古くから天然ゴムの単位構成分子として知られている。天然ゴム,テレビン油などを熱分解すると得られる。無色でやや刺激臭のある揮発性液体。融点-145.95℃,沸点34.07℃,比重0.78942(0℃)。各種溶剤に可溶,水には不溶。二重結合は共役二重結合をなすので化学反応性が高い。とくに重合活性が高いので,石油化学工業で重要な炭化水素中間体の一つとなっている。ブチルゴムなどの合成ゴム,合成樹脂などの原料として用いられる。最近はイソプレンを単独重合して天然ゴムに非常に近い分子構造をもったイソプレンゴムを合成できるようになったので,その重要性が増している。

 精油,樹脂,弾性ゴム,カロチノイド色素,ビタミンAなど,天然にはイソプレンの重合体,誘導体とみなすことができるものが多い。これらをテルペンと総称するが,その炭素骨格がイソプレンの炭素骨格から成ることをイソプレン則という。表におもなものと重合様式の一例を示す。
執筆者:


出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「イソプレン」の意味・わかりやすい解説

イソプレン

化学式はCH2=C(CH3)−CH=CH2。刺激臭のある無色の液体。融点−145.95℃,沸点34.07℃,比重0.78942。天然ゴムの高分子をつくる主要基本単位。工業的にはイソペンテンの脱水素,プロピレン2量体の熱分解などによって得られる。合成ゴム(イソプレンゴムブチルゴム)用原料として使用。
→関連項目グッタペルカゴム

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イソプレン」の意味・わかりやすい解説

イソプレン
isoprene

2-メチル-1, 3-ブタジエンともいう。化学式 CH2=C(CH3)CH=CH2 。天然ゴムの構成分子であり,天然ゴムの熱分解によって得られる。また石油の分解生成物にも含まれる。合成ゴム製造の原料となる揮発性液体で,沸点 34℃。刺激臭があり,有機溶剤によく溶ける。共役ジエン特有の反応を示し,適当な触媒によりイソプレン自身の重合あるいは他の不飽和化合物と共重合させて,種々の特性をもつ合成ゴムを得ることができる。工業的には石油分解物のイソペンタンの脱水素により生産される。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

栄養・生化学辞典 「イソプレン」の解説

イソプレン

 C5H8 (mw68.12).

 イソプレノイドの構造の基本単位.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android