イソプレンゴム(読み)いそぷれんごむ(その他表記)isoprene rubber

日本大百科全書(ニッポニカ) 「イソプレンゴム」の意味・わかりやすい解説

イソプレンゴム
いそぷれんごむ
isoprene rubber

イソプレン重合体ASTM(アメリカ材料試験協会)の規格による略称IR。一般にはシス-1,4結合が94%以上の立体規則性ポリイソプレンである。


ステレオゴム、また天然ゴムと同じ化学構造をもつので、合成天然ゴムともよばれた。ツィーグラーチーグラー)系触媒やアルキルリチウム触媒によるイソプレンの溶液重合で製造され、シス-1,4結合が98%のポリイソプレンまで得られている。特性は天然ゴムに類似し、硫黄(いおう)や過酸化物により加硫される。品質がより均一で色も淡い。生ゴムの粘度を調整して加工性をよくすることが可能である。加硫ゴムは天然ゴムに比べて伸びや亀裂(きれつ)発生に対する抵抗性が大きく、発熱が少なく、耐摩粍性、耐老化性、電気特性などがよい。天然ゴムと同様の用途に使用できるが、天然ゴムに比較して高価であり、トラック、バス、航空機などの重負荷タイヤ性能が劣るため需要が伸びていない。質的には汎用(はんよう)ゴムであるが、量的には特殊ゴムの範囲に入る。

[福田和吉]

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改訂新版 世界大百科事典 「イソプレンゴム」の意味・わかりやすい解説

イソプレンゴム
isoprene rubber

略称IR。イソプレンを重合させて得られる合成ゴム。合成ゴムの中で最も天然ゴムに近い分子構造をもった汎用合成ゴムである。天然ゴムはほぼ純粋なシス-1,4結合のポリイソプレンである。イソプレンを重合させて天然ゴムと同じ構造のゴムを合成することは長い間,化学者の夢であったが,初期に得られたものは天然ゴムとはまったくかけ離れたものであった。1950年代になり,立体規則性重合の展開によりシス-1,4結合を90%以上含む高シス-1,4ポリイソプレンの合成が可能となったことから〈合成天然ゴム〉の出現として注目され,これらは順次イソプレンゴムとして工業生産に移された。使用する重合触媒の種類によってシス-1,4結合の純度に差があり,アルキルリチウム系触媒では93%程度,四塩化チタン・トリアルキルアルミニウム系チーグラー触媒では98%程度である。IRは分子構造的に天然ゴムにきわめてよく似ているため,その性質も天然ゴムによく似ている。しかも天然ゴムに比べて品質が一定しており,ごみなどの異物混入がない,淡色である,加工しやすいなどの特徴があり,自動車タイヤをはじめ多くのゴム製品に使用されている。
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化学辞典 第2版 「イソプレンゴム」の解説

イソプレンゴム
イソプレンゴム
isoprene rubber

IRと略記される.イソプレンの重合体.一般には天然ゴム(ヘビアゴム)炭化水素と同じ構造をもつ合成シス-1,4-ポリイソプレンをいうが,グタペルカ炭化水素と同じ構造のトランス-1,4-ポリイソプレンもつくられている.シス-1,4-ポリイソプレンは,チーグラー触媒や金属リチウム触媒によるイソプレンの溶液重合でつくられる.天然ゴムに似た性質を示し,タイヤトレッド以外はほとんど天然ゴムと同様に使用できるが強度が少し劣る.[CAS 104389-31-3:cis][CAS 104389-32-4:trans][別用語参照]ゴム

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百科事典マイペディア 「イソプレンゴム」の意味・わかりやすい解説

イソプレンゴム

略称IR。イソプレンを重合させて得られる合成ゴム。1950年代から合成技術の進展により出現。天然ゴムと構造,組成ともほとんど同一で,天然ゴムに比べて品質も一定している。成形性にすぐれ,淡色で着色性もよく,自動車タイヤをはじめとする多くのゴム製品に使用されている。
→関連項目イソプレン合成ゴムステレオゴム

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イソプレンゴム」の意味・わかりやすい解説

イソプレンゴム
isoprene rubber

略称 IR。合成天然ゴムともいう。イソプレンの重合によって得られる合成ゴムの一種。天然ゴムの化学的成分はイソプレンの重合体で,IRはイソプレンを溶液重合法によって合成したものであるから,化学構造は天然ゴムとよく似ており,天然ゴムの代用品として使われる。性質も天然ゴムに類似するが,耐熱老化性,安定性などはすぐれている反面,加硫速度はやや劣る。 1954年アメリカのグッドリッチ社,55年アメリカのファイヤストーン社,グッドイヤー社などが相次いで発表,工業生産を開始した。日本でも日本合成ゴム (現 JSR) ,日本ゼオンなどが企業化したのに続いて各社が生産している。

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