イブキ
いぶき / 伊吹
[学] Sabina chinensis (L.) Ant.
Juniperus chinensis L.
ヒノキ科(分子系統に基づく分類:ヒノキ科)の常緑針葉高木で、大きいものは高さ25メートル、直径2メートルに達する。別名ビャクシン。樹皮は赤褐色で縦裂し、薄くはがれる。葉には鱗片葉(りんぺんよう)と針状葉の2型がある。雌雄異株。4月に開花する。雄花は楕円(だえん)形で小枝の先につき、雌花もまた小枝の先に1個つく。果実は丸く肉質で、翌年の9~10月に紫黒色に熟し白粉をかぶる。本州、四国、九州の潮風のつねに吹いている沿海地に多く、中国にも分布する。材は堅硬で緻密(ちみつ)、耐朽性があり、木理(もくり)は光沢と香りがあり美しい。建築、器具、装飾、彫刻、寄木細工、鉛筆、香料、薬用などに利用される。名は伊吹柏槇(びゃくしん)の略で、茨城県いぶき山に多く生えていることからつけられた。品種に、枝がややねじれて樹形のまとまりのよいカイズカイブキがよく知られるほか、針状葉のみのタチビャクシン、多くの鱗片葉があり、樹形は球形で小形のタマイブキなどがあり、基本種とともに庭木、盆栽、生け垣などに広く使われる。変種に高山に生え、幹は地をはい、多くの鱗片葉からなるミヤマビャクシン、九州の島々に生え、幹は地をはい、多くの針状葉のみからなるハイビャクシンがある。
[林 弥栄 2018年6月19日]
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イブキ
ビャクシンとも。ヒノキ科の常緑高木。本州〜九州の主として太平洋側の海岸地方にはえ,庭などにも植栽。幹はしばしば強くねじれる。葉は鱗片状で対生し枝に密着して,細いひも状になるものと,スギのように針状で対生または3輪生するものの2型があり,前者が普通。雌雄異株。4月開花。雄花は黄褐色,雌花は紫緑色となる。果実は球形でやや肉質,翌年10月に熟し,紫黒色で粉白を帯びる。樹形が円錐形,枝は太く直立してねじれるカイヅカイブキをはじめ,多くの園芸品種がある。変種のハイビャクシン(ソナレとも)は壱岐,対馬などにはえ,幹や枝はマット状に地をはう。庭木とされる。
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イブキ【Chinese juniper】
ビャクシン(柏槙)ともいう(イラスト)。沿海地に点々とみられるヒノキ科の常緑針葉樹で,庭園にも植えられる。高さ20mに達する高木で,密に分枝して円錐形の樹形をなし,幹はときに著しくねじれる。葉に3輪生ないし十字対生の針状葉と十字対生する鱗片葉の2形があり,成木では大半が鱗片葉となる。雌雄異株で,4月ころ短枝端に開花する。雄花は楕円形で黄色,8対のおしべが十字対生する。雌花は紫緑色,3~4対の鱗片が十字対生し,翌秋に球形で帯紫褐色の液果状果実に熟し,2~4個の褐色種子を含む。
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世界大百科事典内のイブキの言及
【カイヅカイブキ(貝塚伊吹)】より
…ヒノキ科の常緑針葉樹ビャクシン(イブキ)(イラスト)の園芸品種で,温暖な地方に広く植えられている。高さ5~15mとなり,幹は太く直立するがねじれる。枝が密に分かれしかも斜めに旋回して伸びるので,樹形は火焰(かえん)状を呈する。ビャクシンの成型に似て通常は鱗片葉のみで,針状の葉をもたない。乾燥,潮風,大気汚染に強く,砂質地にもよく育ち,しかも陽樹ながら日陰にも植えられる。また刈込みにも耐えるので,近年,工場,道路の緑樹帯,住宅地の緑化樹や生垣として多く用いられるようになった。…
【カイヅカイブキ(貝塚伊吹)】より
…ヒノキ科の常緑針葉樹ビャクシン(イブキ)(イラスト)の園芸品種で,温暖な地方に広く植えられている。高さ5~15mとなり,幹は太く直立するがねじれる。枝が密に分かれしかも斜めに旋回して伸びるので,樹形は火焰(かえん)状を呈する。ビャクシンの成型に似て通常は鱗片葉のみで,針状の葉をもたない。乾燥,潮風,大気汚染に強く,砂質地にもよく育ち,しかも陽樹ながら日陰にも植えられる。また刈込みにも耐えるので,近年,工場,道路の緑樹帯,住宅地の緑化樹や生垣として多く用いられるようになった。…
【カイヅカイブキ(貝塚伊吹)】より
…ヒノキ科の常緑針葉樹ビャクシン(イブキ)(イラスト)の園芸品種で,温暖な地方に広く植えられている。高さ5~15mとなり,幹は太く直立するがねじれる。…
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