イワウメ(読み)いわうめ

改訂新版 世界大百科事典 「イワウメ」の意味・わかりやすい解説

イワウメ (岩梅)
Diapensia lapponica L.ssp.obovata(Fr.Schm.)Hultén

高山の岩地に生えるイワウメ科常緑小低木。厚い葉が密に重なり,マット状になって岩をおおう。花の形がウメの形を思わせるのでこの名がある。風当りの強い岩場に密着した茎・葉の様子から,フキヅメソウ(吹詰草)の名もある。茎は多くの枝に分かれ,長さ3~5cm。葉はへら形で先はややへこみ,長さ6~15mm,幅3~5mm,革質で光沢があり,鋸歯はない。7月,枝先に花茎を伸ばし1花をつける。花は上向きに開き,花冠白色でやや黄色を帯び,鐘形で5裂し,径1cmほどある。おしべは5本。果実は球形で3裂し,多数の種子を出す。本州中部以北,北海道,サハリン千島カムチャツカアラスカ分布する。基本変種のD.lapponica L.はヨーロッパの寒帯に分布し,葉の幅が狭く,側脈がほとんどない。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「イワウメ」の意味・わかりやすい解説

イワウメ
いわうめ / 岩梅
[学] Diapensia lapponica L. subsp. obovata Fr.Schm.

イワウメ科(APG分類:イワウメ科)の草状の小低木。茎は多くの枝に分かれて地をはい、常緑の革質でへら形の葉が密生してマット状の株をつくる。夏、枝先に短い花茎を出し、上向きの1花を開く。花は白色、鐘形で5裂し、ウメの花に似る。雄しべは5本。高山の岩地に生え、本州の中部地方以北、北海道、千島、樺太(からふと)(サハリン)、カムチャツカ、アラスカに分布。基本種はヨーロッパにあり、イワウメより葉が細い。

山崎 敬 2021年4月16日]


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百科事典マイペディア 「イワウメ」の意味・わかりやすい解説

イワウメ

イワウメ科の常緑小低木。北海道〜本州中部,北東アジアの高山帯の岩や礫地(れきち)に群生し,マット状をなす。密に互生した葉はへら形で革質,上面の脈は落ち込む。7〜8月,短い花柄の上に花が一つつく。白色の花冠は径約1cm,短い鐘形で先が5裂し,梅の花を思わせる。おしべは5個で花冠の内側につく。

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