改訂新版 世界大百科事典 「インドゴムノキ」の意味・わかりやすい解説
インドゴムノキ
Indian rubber tree
Ficus elastica Roxb.
インド北部からマレー半島一帯の地域の原産とされるクワ科の常緑樹。観葉植物として栽培されるが,古くはマレー半島を中心に,ゴムを採るために栽培された。質がすぐれ,収量の多いパラゴムノキの栽培が増えたため,ゴムを採るための栽培はほとんど消滅した。葉は厚手で光沢があり,長さ30cm程度の楕円形で,先がとがる。中央に太い脈が走り,両縁に向けて細い平行脈が分かれる。新葉を包む托葉は紅色で美しい。熱帯では幹の高さは30mを超える。
執筆者:星川 清親
園芸品種
熱帯域では広く街路樹や庭園樹として栽植され,日本には明治末年に渡来し,ゴムノキと通称されて観賞用に普及した。原種にあたるものは現在はほとんど栽培されていないが,大木になると幹から気根を出し,イチジクの1/10ほどの大きさの果実をつけ,橙黄色に熟す。枝変りを生じやすく,多くの優良品種が観葉植物として選抜されている。アポロcv.Apolloは矮性種で,節間がつまり,葉長10~20cmで,葉面にしわが多く,暗緑色で,少しねじれ,小鉢物向き。デコラcv.Decoraは葉が丸く,葉肉も厚く,葉柄が短く,葉が垂れないので草姿もよい。じょうぶで生育旺盛で,鉢物として普及している。デコラ・バリエガータcv.Decora Variegataは淡黄緑色の斑入り種だが,葉が古くなると斑が消えやすい。デコラ・トリカラーcv.Decora Tricolorは,葉縁に白ないしクリーム色の幅広い斑が入る美葉種だが,性質が弱い。アサヒcv.Asahiはデコラの枝変りで,葉縁が白,淡ピンクの覆輪となり,強健で草姿もよい。このほか常緑のイチジク属Ficus植物には,インドボダイジュ,コバンボダイジュF.diversifolia Bl.(東南アジア原産,低木で葉も小型),フィカス・ベンジャミナF.benjamina L.(インド原産,小型の葉),カシワバゴムノキF.lyrataWarb.(アフリカ原産,カシワ状の大型の葉)のように観葉植物として栽植されるものがある。ゴムノキの仲間は,挿木または取木でふやすが,発根には15℃以上の高温が必要。一般に性質は強健で,水やり,日当りなど,管理を工夫すれば5~8℃でも越冬する。
執筆者:高林 成年
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報