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インド神話 インドしんわIndian mythology

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

インド神話
インドしんわ
Indian mythology

インド神話は一般にベーダ神話とヒンドゥー教神話に大別されるが,両者は互いに補い合う性質のものである。ベーダの神々としては,インドラ (帝釈天) ,スーリヤ (太陽神) ,アグニ (火神) ,ソーマ (酒神) ,バルナ (律法神,水天) ,ミトラ (契約の神) ,サラスバティー (河川の女神,弁財天) などが知られている。なかでもインドラ神に関する神話は中心的な地位を占めている。ヒンドゥー教の神話は二大叙事詩,プラーナ聖典などで説かれている。ヒンドゥー教神話にはベーダの神々のほかにも多くの神が登場するが,なかでも,ブラフマー (梵天) ,ビシュヌ,シバが三大神とみなされ,特にビシュヌ神とシバ神は圧倒的な信者数を獲得し,ヒンドゥー教の二大宗派を形成するにいたった。ビシュヌの妃シュリー・ラクシュミー (吉祥天) ,シバの妃パールバティー (ガウリー) もその夫と同様,広く民衆の信仰を集めた。インド神話の神々としては,そのほかにも,愛の神カーマ,富の神クベーラ (毘沙門天) ,シバの息子スカンダ (韋駄天) ,シバの眷族のガネーシャ (聖天) ,死者の王ヤマ (閻魔) などが有名である。

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世界大百科事典 第2版の解説

インドしんわ【インド神話】

インドの思想・文化を理解するためには,インド神話の知識が不可欠である。また近年,比較神話学の分野において,インド神話は重要な位置を占めている。インド神話は,一般にベーダの神話と,叙事詩・プラーナ聖典の神話に大別される。
【《リグ・ベーダ》の神話】
 前1500年から前900年ごろに作られた,最古のベーダ文献である《リグ・ベーダ本集》には,一貫した筋の神話は見いだされないが,事実上の作者である聖仙(リシ,カビ)たちは,当時のインド・アーリヤ人が持っていたなんらかの神話を前提として詩作したと思われる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

インド神話
いんどしんわ

インドの神話はベーダ神話とヒンドゥー教神話とに大別される。[原 實]

ベーダ神話

ベーダ聖典に現れる神々のなかには、太陽、火、風、雨、雷などの天然現象に淵源(えんげん)するものが少なくない。雷霆神(らいていしん)の様相を有するインドラは、同時に武勇の神として金剛杵(こんごうしょ)を持し、神酒ソーマによって鋭気を養い、風神マルトの群を従えて悪魔ブリトラを退治し、待望の水を人間界にもたらす。祭祀(さいし)の庭を照らす火神アグニは、神々の先達(せんだつ)となり、祭主の客人となって火に捧(ささ)げられた供物を天上界に運搬するものと考えられた。律法神バルナは天地、人倫の理法リタを持し、日月の運行、四季の循環をつかさどり、探偵を放って人間の行動を監視し、索をもって悪人を懲らしめる。この神は契約の神ミトラ、歓待の神格化アリヤマンとともにアーディティヤ三神とされるが、古来水との関連が深い。いっさいをはぐくみ生類を活気づける太陽は、スーリヤ、サビトリ、プーシャン、ビシュヌの名のもとに崇拝される。女神としては、ギリシアのロゴスに比較される言神(げんしん)バーチュ、いっさいを保持し豊穣(ほうじょう)を恵む大地の神格化プリティビー、夜の精ラートリー、森の精アラニヤーニー、川の精サラスバティーなどがある。とくに著名なのは東の空を紅(あけ)に染める暁紅神(ぎょうこうしん)ウシャスで、その描写のなかに古代インド人の可憐(かれん)な乙女の像をみることができる。しかしギリシア神話と比較したとき、これらベーダの神々は宗教的色彩が濃く、また各自独立性が強く、神々相互の親族関係の系譜は明らかでない。
 後世の哲学的思弁に影響したものとして、宇宙の創造神話がある。茫洋(ぼうよう)たる水のなかに黄金の胎児がはらまれ、それから神々が生まれ、太陽と交え、山海が生じたとなすもの、また「有」もなく「無」もなかった太古に、暗黒のなかに安らう唯一の中性的原理からいっさいが開ききったとなすもの、さらに原人プルシャを神に生贄(いけにえ)として捧げ、その身体の各部分から森羅万象および四階級(四姓)が生まれたとなす巨人解体神話がこのなかで数えられる。ノアの箱舟を思わせる洪水伝説、1人生き残った人祖マヌのなした苦行の結果、人類が繁栄したとする伝説も、古くから伝えられる。[原 實]

ヒンドゥー教神話

ヒンドゥー教の神話にあってもっとも著名な神々は、ブラフマー(梵天(ぼんてん))、ビシュヌ、シバの3神である。三者は三位(さんみ)一体的に「トリムールティtrimrti(三柱の神)」と呼び習わされ、宇宙の創造、維持、破壊をそれぞれにつかさどるものといわれる。このうちブラフマーは名ばかりで、信者を集めたことがまれであったが、ビシュヌ、シバ両神は多数の教徒を集めてヒンドゥー教の二大宗派を形成し、数多くの神話が伝えられている。ビシュヌ神はもと太陽神であったものが、祭式に関係づけられ、明朗にして正統的な色彩が濃厚であったのに対し、シバ神は山奥にあって畜群の長としての元来の性格を反映してか、祭祀の敵であり、凶暴にして陰惨な影をとどめている。大海の底で神妃(しんぴ)シュリー・ラクシュミー(吉祥天女(きっしょうてんにょ))を抱き、ヘビの王シェーシャを枕(まくら)に安らかに眠っているビシュヌは、しかしいったん事変が起これば神々の請いをいれて悪魔を退治し、正義を守る。この神にはクリシュナ、ラーマなど10の化身伝説が伝えられ、乱世には天から降り、人獣の形をとって地上に現れ、不義を討つ。また正しい秩序を回復して天に帰るといわれ、その点で救世主的な性格がある。この性格が熱烈な唯一神教的信愛の精神を鼓舞した。これに対してシバ神は、妖怪変化(ようかいへんげ)の長として火葬場にさまよい、全身に屍(しかばね)の灰を塗り、象皮(ぞうひ)をまとって大蛇を帯とする。深山に激烈な苦行を営み、ヒマラヤ山の娘ウマー・パールバティーを妃(きさき)とする。軍神スカンダの父神としてのシバ神と、この女神が狂暴放埒(ほうらつ)な性格を濃厚に示す。またダクシャ・プラジャーパティの祭式に招かれざる客として乗り込み、祭祀を破壊し、さらに苦行の障害をなす愛の神を焼き殺す。凶暴な山間民キラータの長として君臨するが、古くから歌舞音曲の守護神となり、少数の例外を除いて文芸作品の多くがこの神に捧げられている。
 このほか、世界の守護神も東西南北にインドラ、バルナ、ヤマ、クベーラとあるが、前二者はベーダの神である。ヤマはもと死者の国の王とされ、明るい側面を有したが、ヒンドゥー教にあっては赤目で肌が黒光りし、黄衣をまとって縄を手にし、人間の体から親指大の霊魂を力まかせに引き抜いて去っていく死神とされる。ただし、単なる死神というよりも悪人を懲らしめる律法的性格が強いことは、「ダルマラージャdharmarja(法の王)」という別名からうかがい知れる。クベーラは財宝の神で、ヒマラヤのカイラーサ山頂にある美麗なアラカー宮殿に住むといわれるが、もともとは妖怪、夜叉(やしゃ)、羅刹(らせつ)(悪鬼)の長であり、むしろ明朗な性格は希薄である。
 これらの神々はその昔、乳海を攪拌(かくはん)して不老不死の妙薬アムリタ(甘露)を得、これを飲んでつねに25歳の若さを保ったといわれる。体に汗をかくことのない彼らは、その衣に塵(ちり)を寄せ付けず、また影を伴わない。さらに足は地につかず、まばたきもしないなどといわれて、可死の人間とは区別される特徴を有しているが、そのなかのいくつかは仏典に入り、「天人の五衰」のなかに言及されている。[原 實]
『上村勝彦著『インド神話』(1981・東京書籍)』

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