スーリヤ(読み)すーりや(その他表記)Sūrya

日本大百科全書(ニッポニカ) 「スーリヤ」の意味・わかりやすい解説

スーリヤ
すーりや
Sūrya

古代インド語で太陽を意味し、サビトリ、プーシャン、アーディトヤ、ビシュヌなどとともに神格化された太陽の一呼称となった。とりわけスーリヤはその「光輝」の側面を強調している。ベーダ文献においては、暁紅の女神ウシャスの後を追う若人に擬せられ、駿馬(しゅんめ)のひく車を駆って天の背に昇り、1日のうちに天地を馳(は)せ巡る。その馬は7頭ともいわれ、後世、彼の従者として御者アルナが登場する。ヒンドゥー教神話に至ると他の諸呼称を圧してひとり太陽をさすようになり、信者を集め、オリッサ(現、オディシャ)のコナーラクには有名な太陽寺院がつくられた。数多くの伝説、賛歌も伝えられる。ビシュバカルマン(造一切神)の娘を妻とし、3人の子をもうけたが、光輝に耐えかねた妻は出家遁世(とんせい)した。復縁を迫った彼のために岳父はスーリヤの光輝を砕いて弱め、その破片より神々の武器をつくったといわれる。そのほかスーリヤはヤージュニャバルキヤに『白ヤジュル・ベーダ』を宣示し、叙事詩の英雄カルナの父となり、また伝説上のインドの王統の或(あ)るものはスーリヤ起源を標榜(ひょうぼう)している。

[原 實]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スーリヤ」の意味・わかりやすい解説

スーリヤ
Sūrya

インド神話の神。太陽を神格化したもの。プラーナ文献では,3つの目,4本の腕をもった濃い赤色の人間の姿で描写されている。2本の手に蓮華を持ち,3番目の手によって祝福を授け,4番目の手で崇拝者たちを励ます。そしてしばしば赤い蓮華の上にすわり,体からは栄光光線が放射している。スーリヤは暗黒を払い,人々を覚醒させて活動を促し,諸神の目として下界の生類の行動を看視する。暁の神ウシャスの恋人としてそのあとを追い,7頭の馬の引く車を御すともいわれる。また飛んでいく鳥にたとえられることもある。この神は『アタルバ・ベーダ』,ブラーフマナおよび叙事詩時代を通じて太陽神の位置を持続した。

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百科事典マイペディア 「スーリヤ」の意味・わかりやすい解説

スーリヤ

インド神話の太陽神。《リグ・ベーダ》には7頭立ての馬車で空を駆け巡るとある。暁女神ウシャスはその配偶神。仏教にも入り,日本では十二天のうちの日天とされる。コナーラクのスーリヤ寺は,堂そのものが同神の乗物となっていることで知られる。
→関連項目サビトリ

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世界大百科事典(旧版)内のスーリヤの言及

【ウマ(馬)】より

…馬の象徴的意味内容は,主としてその肉体的能力(牽引,騎乗などに利用),怜悧(れいり)な判断力,さらに加えて毛色(とくに白と黒)に基づく。まず馬(とくに白馬)は太陽神(ギリシアのヘリオス,インドのスーリヤSūryaなど)の乗る車を引く聖獣とされ,さらに太陽そのものの象徴ともなる。他方,死者の車を死の国に引きゆく獣でもあり,それゆえ死者とともに葬られる例が多く,馬の像(テラコッタ),馬具などを副葬品とすることもある。…

【サビトリ】より

…その名は〈刺激・鼓舞する〉を意味するサンスクリットsūに由来し,万物に光と熱を送って刺激する太陽の活動を表すとされる。黄金の両手をさしのべ,光線で全宇宙を照らすとされ,より具体的な太陽神スーリヤと同一視される場合もある。彼の,光線のように発せられる〈鼓舞・激励〉する力はプラサバprasavaと呼ばれ,神々も難事をなすときはこれを受けて行ったとされる。…

【ビンディヤ[山脈]】より

…現在3本の山脈横断鉄道があり,インドール,ボーパール,ムルワラはそれぞれの沿線にある山脈上の重要都市である。【藤原 健蔵】
[インド神話におけるビンディヤ山脈]
 かつてビンディヤの山神はヒマラヤの高さをねたみ,太陽神スーリヤがメール山のまわりを回転するように,自分のまわりを回ってくれと頼んだが,スーリヤがそれを拒んだので,太陽の光を遮るため頭を上げてヒマラヤより高くそびえた。そこで神々はビンディヤの師アガスティヤ仙にそれを止めるように頼んだ。…

【マユーラ】より

…戒日王ハルシャ(在位606‐648)の宮廷詩人として有名なバーナBāṇaの義父(あるいは義兄)といわれる。恋愛抒情詩《マユーラ・シャタカMayūra‐śataka》と宗教的抒情詩《スーリヤ・シャタカSūrya‐śataka》を残した。伝説によれば,代表作《スーリヤ・シャタカ》成立の由来は,彼が《マユーラ・シャタカ》の中で,自分の娘(あるいは妹)が愛人のもとに行き,戻るまでの情景をあまりに露骨に描写したため,怒った娘の呪詛によって癩病となったが,太陽神スーリヤを賛美したこの詩を書いて業病から快癒したという。…

※「スーリヤ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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