翻訳|viroid
バイロイドともいう。ウイロイドは〈ウイルスのような〉という意味であるが,ウイルスと異なって外被タンパクをもたない単一分子の核酸のみからなる病原体で,今日までに知られている病原体のなかでは最も小さいものである。1971年にT.O.ディーナーは,ジャガイモやせいも病の病原体が自己増殖する低分子量RNAであることを証明し,このような病原体をウイロイドと名付けた。その後,高等植物の病気として8種類のウイロイド病が世界中で発見された。日本に発生するものとして,かんきつエキソコーティス病,キク矮化(わいか)病,ホップ矮化病が知られている。植物以外の生物におけるウイロイド病は知られていないが,動物の遅発性ウイルス感染症がそうではないかと考えられている。ウイロイドに感染した植物の病徴は一般に矮化で,収量減や商品価値の低下が起こる。かんきつ類では接木した穂木の矮化と台木の剝皮(はくひ)を示す。ウイロイドは病株の汁液がついた農機具などに健全株が接触して伝染する機械的伝染と,接木による伝染をする。防除法は効果のある農薬はなく,病株の抜き取り程度しかない。ウイロイドの理化学的性状は,分子量約11万5000の環状1本鎖RNAで,部分的にはその分子内で多くの塩基対を形成して二重鎖となっている。全塩基配列の決定されたウイロイドもある。宿主細胞内でのウイロイドの複製様式,宿主植物の発病機構はまだ解明されていない。
執筆者:夏秋 知英
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…これらのウイルスの遺伝子RNAはウイルスRNAと呼ばれ,ウイルス粒子内で1本鎖状態で存在するものが多いが,レオウイルスなどのように二重鎖RNAをもつものもある。 ウイロイドviroidはビロイドともバイロイドとも呼ばれ,植物に感染する病原体として見いだされた数百ヌクレオチド長程度の小さなRNA分子である。タンパク質の外被をもたず,裸の環状1本鎖RNAとして存在し,それ自身の塩基配列にはタンパク質を生産する情報はもたないと考えられる。…
…リボソームには2分子のtRNAが結合し,mRNAのコドンの配列に従って,運んできたアミノ酸を順に新生ペプチド鎖へ引き渡す。
[ウイルスRNAとウイロイド]
動植物ウイルスから細菌ウイルスにいたるまで,いずれのウイルスもDNAかRNAかのどちらか一方のみを遺伝物質として粒子内にもち,DNAウイルスとRNAウイルスに区別される。RNAウイルスの例としては,細菌ウイルスではRNAファージ,動物ウイルスでは例えばインフルエンザウイルスやRNA腫瘍ウイルスが知られ,植物ウイルスでは多くのものがRNA型である。…
※「ウイロイド」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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