ウード(その他表記)`ūd[アラビア]

デジタル大辞泉 「ウード」の意味・読み・例文・類語

ウード(〈アラビア〉‘ūd)

アラブ諸国で用いる撥弦楽器。半球形の胴にさおが付き、8~14本の弦を2本ずつ同音に調弦し、鳥の羽の軸ではじいて演奏する。アラブ音楽の中心的楽器で、リュート琵琶びわと同系といわれる。

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精選版 日本国語大辞典 「ウード」の意味・読み・例文・類語

ウード

  1. 〘 名詞 〙 ( [アラビア語] ‘ūd ) アラブ・イラントルコの音楽に用いられる撥弦楽器。胴はマンドリンに似ており、普通五弦。

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改訂新版 世界大百科事典 「ウード」の意味・わかりやすい解説

ウード
`ūd[アラビア]

アラブ音楽の中心的楽器。ヨーロッパのマンドリン,日本の琵琶と似た形で西洋梨形の胴をもつ弦楽器。木製で,糸巻のある先端半分ほどが後方へ傾斜した柄をもつ。フレットはない。弦はガットナイロン,または金属製で,4弦または5組の複弦,あるいは5組の複弦プラス単弦など,数はさまざまである。西アジアから北アフリカまで広く分布し,各地方により少しずつ形や装飾が異なる。調弦法も地域により,大きく分けて2種類のタイプがある。一つは西南アジアのもので,最低音の弦と次の弦が長2度間隔に調弦されるほかはすべて完全4度間隔に調弦される。もう1種はチュニジアモロッコなどの北アフリカ地方のもので,オクターブと完全4度,5度,あるいは長6度と完全5度,4度に調弦される。弦は,ワシの羽の根元の部分を右手に持ってはじくか,指先ではじいて奏される。アラブの音楽文化の中で,楽器の王者と呼ばれるほど重要な役割をもち,独奏をはじめ,歌の伴奏のほか,カーヌーンやナーイ,またタブラなどの弦楽器とのアンサンブルでも奏される。歴史的には起源は明らかでないが,イスラム初期あるいはそれ以前に,木製の胴をもつペルシアのバルバトbarbaṭが紹介されて,それまであった革張りの胴をもつミズハールmizhārに影響を与え,〈木〉を意味するアラビア語であるウードと呼ばれる楽器が生まれたと考えられる。以後ウードは改良を加えられながら,音楽理論や音組織を論じるさいにとり上げられるようになった。音楽学者ファーラービーはじめ音楽家,理論家たちは著書の中で,音組織の実験の土台としてウードをもちいている。なお,ウードは十字軍とともに,またスペインを経て中世ヨーロッパに入り,リュートの祖となった。リュートという名は,アラビア語の冠詞alをつけたウード,al-`ūdに由来するものである。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウード」の意味・わかりやすい解説

ウード
`ūd

アラブ諸国,トルコおよびイランで使われる弦鳴楽器。西洋なしを縦割りにした形の寄木細工の胴と,フレットのない短い棹をもつリュート属の撥弦楽器で,腹面には薄い板が張ってある。糸蔵は後方に折れ曲り,糸巻はその両側から横に差込まれる。今日のウードは5~6コースの複弦 (羊腸弦あるいはナイロン) で,基本的に4度関係を保って調弦される。ただしマカームの性格によってはこの調弦法も変りうる。表板の中央よりやや上方に,象牙などの透かし彫で飾った響孔があり,ブリッジ (駒) は表板上に固着される。両者の間に鼈甲などの薄い板でつくった撥面が張られ,奏者は楽器を水平にかかえて,鳥の羽軸の撥を撥面に打ちつけるようにして弦をはじく。ウードは9世紀以来,アラビア古典音楽で最も重んじられた楽器で,古来の音楽理論家はこの楽器によって音階理論やエートス論を展開した。またウードはヨーロッパのリュートの祖先であり,lute (イギリス) ,luth (フランス) ,laud (スペイン) ,Laute (ドイツ) などの名称も,アラビア語 al-`ūdに由来している。なお楽器史では,ササン朝ペルシアバルバットがウードの原型となったと考えられるので,中国および日本の琵琶とも姉妹関係になる。

ウード
Eudes; Odo

[生]860?
[没]898.1.1. ラフェール
パリ伯,西フランク王 (在位 888~898) 。オドとも呼ばれる。 885~886年のノルマンの侵略に際しパリ防衛に成功し,888年カロリング朝のシャルル3世 (肥満王) に代わって西フランク王となった。しかしフランドルのボールドウィン2世の反抗やアキテーヌにおける反乱に妨害され,ノルマンと妥協し東フランク王アルヌルフの優位を認めた。アキテーヌに滞在中にランスの司教フルクが,893年カロリング朝のシャルル3世 (単純王)を戴冠させたため,2人の王の間で内乱が始まったが,シャルルは敗れてウードの王位を認め,ウードもセーヌとミューズ間の土地をシャルルに与えた。死に際して弟ロベール1世にシャルルを支持するように遺言した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウード」の意味・わかりやすい解説

ウード
うーど
‘ūd アラビア語

アラブ諸国で用いられている撥弦(はつげん)楽器。アラビア語で「木」を意味する。ペルシア起源と考えられ、7世紀には中近東で広く使用されていた。9世紀にイベリア半島に導入され、西洋のリュートの原型となる。一般的な形態は、洋ナシ型の共鳴胴と、フレットのない、糸蔵(いとぐら)が後方に折れた棹(さお)からなり、胴の中央部には透(すかし)彫りのついた響孔、その下方に木板やべっこうの撥面をもつ。この形態は、同じ西アジア起源とされている琵琶(びわ)(ただしフレットなし)と共通する。地域によって弦の数は異なるが、8~14本の弦が2本ずつ同音調律されている場合が多い(たとえばエジプトではG3―A3―D4―G4―C5など)。独奏、合奏、歌の伴奏用に使われるが、フレットがないため微小音程を表出しやすい一方、持続音を出しにくいので、細かい装飾音をつけたり、トレモロ奏法を用いたりして単旋律を奏する。

[山田陽一]

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百科事典マイペディア 「ウード」の意味・わかりやすい解説

ウード

アラブ世界のリュート属撥弦楽器。洋梨形でふくらみのある大きな共鳴胴と,糸巻部が後ろにそり返った短い棹をもつ。複弦4〜6コース。フレットはなく,右手に持った小さなバチ(鷲の羽の【かく】,現在はプラスチック製)か指先ではじく。アラビア音楽の影響下にある地域に広く分布し,おもに古典音楽の独奏,合奏,伴奏に用いられる。古くから音律測定器としての役割ももつ。ヨーロッパのリュートの原型。東アジアの琵琶も同系の楽器。
→関連項目アルワッハーブターラブ

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世界大百科事典(旧版)内のウードの言及

【カペー朝】より


[成立と権力基盤]
 カペー家les Capétiensはその登極以前に,ライン地方から移ってきた北フランスの豪族ロベール・ル・フォールRobert le Fort(?‐866)を始祖とするロベール家の前史をもつ。2代目のパリ伯ウードEude(s)はノルマン人と戦ってパリを防衛し,西フランクの王位につく。ウードの治世(888‐898)はカロリング王権の衰退と領邦(プランシポーテprincipauté)の成立という二重の意味で,新時代の開幕を告げるものであった。…

【バイキング】より

…イングランドではアルフレッド大王がねばり強い反撃を組織し,デイン人の首領グソルムとの協定(886)によって,イングランド北東部はデイン人のものにとどまったが(デインロー),南西部はウェセックスのものとなった。パリでは884‐885年ころのバイキングの大襲撃が,パリ伯ウード(カペー朝の祖)の指揮する防衛によって撃退された。880年代からライン・モーゼル川流域を攻略し,クサンテン(882),アーヘン,ケルン,コブレンツ,トリール(883)などを略奪・破壊したライン・バイキングは,991年,東フランク王ケルンテンのアルヌルフ遠征軍によって,ルーバン(ルーベン)付近で壊滅させられた。…

【カロリング朝】より

… フランク王国そのものは,カール3世(皇帝在位881‐887)のとき一時統合されるが,この皇帝はノルマン人対策に失敗した。その間に西フランクでは,ノルマン人のパリ包囲(885‐886)で功績をあげたロベール家(後のカペー家)のウードEudes(在位887‐897)や,ブルゴーニュのラウールRaoul(在位923‐936)が王に選ばれ,この王朝による王位の独占の原則は,早くもやぶれ,ユーグ・カペーの登極によってカロリング朝は終わった(987)。東フランクでは911年のザクセン朝の登場によってこの家系の王・皇帝は絶える。…

【リュート】より

…一方,中近東に生まれたリュートの祖型は,やがてペルシアにおいてとくに盛んになり,バルバットbarbatと呼ばれる楽器へと発達した。古代の末期から中世初期,ササン朝時代に好んで用いられたこの楽器はやがてアラブに伝わり,そこではウードと呼ばれた。711年,イベリア半島に侵攻してここを支配したイスラム教徒は,ウードを携えて行った。…

※「ウード」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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