二酸化炭素(CO2)や窒素酸化物(NOX)などの排出量が少なく、燃費もよい自動車。環境対応車ともいう。エコロジー(環境)とエコノミー(節約)の性格をあわせもつため、エコカー(eco car、和製英語)とよばれる。エンジンとモーターの両方を動力源とするハイブリッド・カーのほか、電気自動車、燃料電池車などの総称でもある。環境意識の高まりなどを背景に、日米欧をはじめ世界中で本格的に普及しつつある。
エコカーは、(1)エンジンを使わない自動車、(2)エンジンとモーターを組み合わせたハイブリッド・カー、(3)エンジンの環境性能を向上させた自動車、の3種類に大きく分かれる。エンジンを使わない車には、電気自動車と燃料電池車がある。電気自動車は小型で軽量なリチウムイオンなどの電池を搭載し、電池に蓄えた電気を動力としてモーターで走行する。燃料電池車は水素を搭載し、空気中の酸素と反応させて電気をつくり、モーターで走る。ハイブリッド・カーには、街角や家庭の充電設備で充電できるプラグイン型がある。既存のエンジン能力を向上させるタイプには、軽油などを燃料とする低公害型ディーゼル車などがある。
量産型のエコカー開発では、日本車メーカーが先行し、1997年(平成9)にトヨタ自動車がハイブリッド・カーのプリウスを発売したほか、2009年(平成21)夏に三菱(みつびし)自動車が電気自動車アイ・ミーブを発売し、2014年にはトヨタ自動車が燃料電池車ミライを発売した。また、2008年以降の世界同時不況の景気刺激策として、世界各国がエコカー普及を後押しする税制優遇策や補助金を相次いで導入し、欧米の自動車メーカーも次々にエコカーの量産を始めた。エコカー開発には先行投資が欠かせないため、トヨタ自動車とドイツのBMW、本田技研工業(ホンダ)とアメリカのゼネラル・モーターズ(GM)など、自動車大手どうしの提携も進んでいる。国際エネルギー機関(IEA)によると、2021年における電気自動車とプラグイン・ハイブリッド・カーをあわせた新車(乗用車)販売台数は前年比2.2倍の660万台となり、その7割を電気自動車が占めた。地域別では、中国が前年比3倍弱の330万台、欧州が65%増の230万台、アメリカが約2倍の63万台。なお、より高い環境効率を求める動きが強まっており、たとえばアメリカのカリフォルニア州では自動車メーカーに対して販売台数の一定割合を「排気ガスゼロ車(ZEV)」とすることが義務づけられ、この規制は他の州にも採用されつつある。また、ヨーロッパ連合(EU)においてもZEVの普及を促す政策が予定されている。
[矢野 武 2023年6月19日]
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