石炭系のガス軽油gas light oilを指す場合と石油系のガス油gas oilを指す場合とがあるが,ここでは後者について解説する。一般に,灯油と重油の中間の沸点範囲をもつ石油留分を軽油(ガス油)といい,石油精製工程で生ずる中間製品および最終製品の両者に対してこの名称が使われる。中間製品としての軽油には軽質軽油と重質軽油があり,前者は常圧蒸留塔から得られる沸点範囲約220~340℃の留分,後者は減圧蒸留塔から得られる塔頂の留分である。最終製品としての軽油は軽質軽油を必要に応じて脱硫して生産され,圧縮点火エンジンの燃料になる。重質軽油は接触分解してガソリンに変換され,あるいは水素化脱硫工程を経て重油生産のための混合材源となる。圧縮点火エンジン用軽油はディーゼル軽油とも呼ばれ,トラック,バスなどの自動車,建設機械や鉄道用小型高速エンジンに用いられる。ディーゼル軽油に要求される品質として着火性,低温流動性,硫黄分などがJISに規定されている(表参照)。ディーゼル軽油の着火性を示す指標はセタン価またはセタン指数である。流動点は冬季厳寒時にエンジンの始動性を左右する。必要によりワックス分を除くか,添加剤を加えて流動点を低下させることも行われる。硫黄分はエンジンの腐食,排気による公害などの防止のため,水素化精製法により除去する。
執筆者:冨永 博夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
石油製品の一つ。重油に比べて沸点が低いことから軽油とよばれる。各種炭化水素の混合物で、沸点は200~550℃の範囲、引火点は50℃以上、比重0.79~0.85の間である。色は原料の石油により異なり、無色ないし淡褐色である。
軽油には軽質軽油と重質軽油があり、前者は石油の常圧蒸留において灯油ののちに留出する沸点約200~340℃の留分である。通常の石油製品としての軽油は、軽質軽油と、これを水素化脱硫した脱硫軽油とを調合したもので、自動車や鉄道用などの高速ディーゼルエンジンの燃料に主として用いられる。ディーゼル燃料の重要な性質は、着火性を表すセタン価であり、高速ディーゼル燃料としてはセタン価40~60のものが用いられる。
重質軽油は、石油の常圧蒸留において軽質軽油ののちに留出する留分と、常圧蒸留残油の減圧蒸留において最初に留出する油である。重質軽油またはこれを水素化脱硫したものは、常圧蒸留残油と調合され重油となる。また、分解ガソリン製造のための接触分解および水素化分解の原料としても用いられる。軽油のそのほかの用途としては、機械の洗浄用、陶磁器用バーナー燃料、溶剤などがある。
なお、軽油は石油の蒸留で得られるほか、減圧蒸留残油(ストレートアスファルト)の熱分解による石油コークスの製造の際に副生する。石炭の液化油およびオイルサンドまたはオイルシェールからの合成石油を原料として製造することも可能である。
[難波征太郎]
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沸点約250~350 ℃ の石油製品.原油の常圧蒸留によって得られる留出油中の最高沸点留分にあたり,通常,これを水素化精製して硫黄分などの不純物を除き製品とする.おもに大型トラック,大型バスなどの高速ディーゼルエンジン用燃料として使用される.これらの燃料としては,セタン価,硫黄分などに対して規格が定められている.また,未精製あるいは水素化精製した重質軽油留分は,常圧蒸留残油と調合して,各種品質の重油が調製される.このほか,常圧蒸留残油をさらに減圧蒸留すると得られる重質軽油(減圧軽油)は,おもに接触分解ガソリン製造原料に用いられる.[別用語参照]ディーゼル燃料
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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