エノク書(読み)エノクしょ(英語表記)Book of Enoch

精選版 日本国語大辞典 「エノク書」の意味・読み・例文・類語

エノクしょ【エノク書】

旧約聖書」の外典一つ。紀元前二世紀以後に成立ユダヤ教の終末思想であるメシア信仰が説かれる。

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改訂新版 世界大百科事典 「エノク書」の意味・わかりやすい解説

エノク書 (エノクしょ)
Book of Enoch

旧約聖書偽典中の書。エチオピア語とスラブ語の2種類がある。(1)エチオピア語《エノク書》の現存する完本は,アラム語原典のギリシア語訳からの重訳本。ほかにアラム語,ヘブライ語,ギリシア語,ラテン語の断片が発見されている。内容は,審判の日の描写,天使論,天上・地上・地下を巡るエノクの旅行記,気象学・天文学的解説,メシア論,大洪水の預言アダムからメシアの到来に至る全歴史の象徴的言語による概観等である。本書クムラン教団と密接な関係にあったが,同教団の著作ではない。37~71章(通称〈たとえの書〉)は〈人の子〉像を含むメシア論のゆえに,キリスト教のメシア論との比較でとり上げられるが,これを3世紀のキリスト教徒の手に帰する有力な説がある。(2)古代教会スラブ語訳により伝えられる《エノク書》は,エジプト(おそらくアレクサンドリア)のユダヤ人が1世紀ごろにギリシア語で著したものの訳で,エチオピア語《エノク書》と共通の主題多く扱っており,共通のエノク伝承にさかのぼる可能性はあるが,個々の内容はひじょうに相違している。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エノク書」の意味・わかりやすい解説

エノク書
エノクしょ
Books of Enoch

旧約聖書偽典の一つ。エチオピア語訳が現存。『エノク書』は前2世紀頃の作で多くの文書集成であり,内容はエノクへの啓示という形をとる黙示文書である。これは広く読まれたらしく,教父たちの評価も高かった。エチオピア語訳は一般に『第1エノク書』と呼ばれ,スラブ語訳の『第2エノク書』と区別される。両書は同一の主題を扱っているが,内容には大きな違いがある。

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