オオスカシバ(読み)おおすかしば

改訂新版 世界大百科事典 「オオスカシバ」の意味・わかりやすい解説

オオスカシバ (大透翅)
Cephonodes hylas

鱗翅目スズメガ科の昆虫。この科の中では小型のガで,開張5cm内外。翅はほとんど透明,体は黄緑色腹部に黒帯と赤帯がある。羽化したときには翅は光沢のない鱗粉に覆われているが,翅が硬化し,細かく羽ばたくと同時に鱗粉が脱落して透明となる。アフリカからオーストラリアまで,熱帯から亜熱帯に広く分布し,日本では本州から南に産する。成虫は昼飛性で,きわめて活発に飛び,雌は幼虫の食草であるクチナシを訪れ,葉や小枝に産卵する。幼虫は緑色または褐色芋虫で,緩やかに曲がった尾角をもつ。クチナシに多数寄生すると丸坊主になることがしばしばある。年2回の発生で,土中に潜ってさなぎで越冬する。成虫の飛翔(ひしよう)力が強いので,クチナシの植えられているところなら都会地でも見られるが,寒冷地で越冬することができないので,おそらく関東地方より北には土着していないであろう。成虫が飛んでいるとよくハチとまちがえられる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「オオスカシバ」の意味・わかりやすい解説

オオスカシバ
おおすかしば / 大透羽蛾
[学] Cephonodes hylas

昆虫綱鱗翅(りんし)目スズメガ科に属するガ。はねの開張55ミリメートル内外で、この科の種類のなかでは小形。体はウグイス色がかった緑色、腹部に赤帯と黒帯がある。はねはほとんど透明であるが、これは、羽化直後まで生えていた光沢のない鱗粉が、はねが硬化し、振動させたときに全部脱落するためである。アフリカからオーストラリアまで広く分布している種で、日本では関東地方より西に分布する。成虫は昼飛性で、日中きわめて活発に飛び、よくハチと誤認される。幼虫は庭木としてよく植えられるクチナシの葉を食べ、老熟すると落ち葉や土粒で粗い繭をつくって蛹化(ようか)する。若齢幼虫が葉の裏面にいて食害しているときは、同じような緑色をしているために、なかなかみつけにくい。夏に成虫がクチナシへ飛来し、葉に1個ずつ産卵する姿がみられる。クチナシは温暖地の山地に自生している植物であるが、品種改良のうえ、各地の庭園に広く植えられるようになったため、このガもそれに伴い都会地へ分布を広げている。

[井上 寛]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オオスカシバ」の意味・わかりやすい解説

オオスカシバ
Cephonodes hyalis

鱗翅目スズメガ科。前翅長 30mm内外。体は太く,黄緑色の鱗毛におおわれ,腹部には赤色鱗を含む黒色鱗毛の帯がある。腹端には長い鱗毛があり,飛翔時にはこれを鳥の尾のように開く。翅は透明で,基部と後縁に黄緑色鱗毛がある。昼間飛び回り,長い口吻を伸ばして花から蜜を吸う。幼虫はクチナシの草を食べる。本州以南の日本全土,台湾,中国東南アジアインドに広く分布する。四国から琉球列島にかけては近縁種リュウキュウオオスカシバ C. xanthusが分布する。

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百科事典マイペディア 「オオスカシバ」の意味・わかりやすい解説

オオスカシバ

鱗翅(りんし)目スズメガ科の1種。開張65mm内外,黄緑色で,腹部に黒紫色の帯があり,腹端に黒い毛束がある。翅は透明。一見ハチに似る。幼虫はクチナシの害虫。成虫は夏に現れ昼間花にくる。北海道を除く日本各地,中国,インド,アフリカにかけて広く分布する。
→関連項目スズメガ

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