オオムカデ(読み)おおむかで(英語表記)centipede

翻訳|centipede

改訂新版 世界大百科事典 「オオムカデ」の意味・わかりやすい解説

オオムカデ (巨蜈蚣)
centipede

唇脚綱オオムカデ目Scolopendromorphaに属する節足動物の総称であるが,ふつうにはオオムカデ科Scolopendridaeのものを指すことが多い。オオムカデ科は体長35cmにも達するオニオオムカデ(世界の熱帯地方に広く産する)を含み,大型のものが多いのでこの名がある。歩肢21対で頭には左右に4個ずつの単眼がある。口器の顎肢には毒腺があり,昆虫クモ,ときにはカエルなどの小動物を捕食する。毒は大型の種類では強力で人がかまれても激痛があり,数日間続くことがある。春から初夏にかけて産卵し,雌は数十個の卵をまとめ,体を籠状にして抱いて保護している。約30日で孵化(ふか)した幼虫は2回の脱皮を終えてから母虫の保護下から独立生活に入る。幼虫は成体と同じ体節数,歩肢数をもち,脱皮ごとに漸進的に成熟していく(微変態)。熱帯,亜熱帯から暖帯地方に分布し,褐色,青緑色,暗緑色のものが多い。日本には頭が茶褐色で背が青黒く,体長15cmになるトビズムカデScolopendra subspinipes mutilans,頭も背も暗緑色で約8cmに達するアオズムカデS.s.japonicaが本州以南にふつうであるが,メクラムカデ科には橙黄色で歩肢23対,無眼のアカムカデ類がほぼ全国に生息している。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「オオムカデ」の意味・わかりやすい解説

オオムカデ
おおむかで / 巨蜈蚣
centipede

節足動物門唇脚(しんきゃく)綱オオムカデ目Scolopendromorphaの陸生動物の総称。熱帯地方を中心に広く分布する大形のムカデ類で、唇脚類を代表するグループである。最大のものは体長約30センチメートルに達するが、普通は約5~15センチメートル。歩肢は21対または23対。背板は緑、青、褐色、黒色など種類により多様である。この鮮やかな体色は、外敵から身を守る警戒色としての効果もある。目は多くは4個の個眼を左右にもつが、無眼のものもある。捕食性で、おもに昆虫やクモを食べるが、もっと大形の動物を襲うこともある。産卵は夏で、卵塊を雌が抱卵して保護する。日本産にはトビズムカデ、アオズムカデのほか、沖縄諸島にタイワンオオムカデやアオムカデなどが分布している。これらの種にかまれると痛みが強く、腫(は)れるので素手で触れるのは危険である。

[篠原圭三郎]

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世界大百科事典(旧版)内のオオムカデの言及

【ムカデ(蜈蚣∥百足)】より

…節足動物門の1綱唇脚類のうち,ゲジ目をのぞく動物群の総称。また日本では大きなトビズムカデ(イラスト)や,アオズムカデを単にムカデと呼ぶ場合も多い。ムカデ類は頭と胴からなり,頭には1対の触角があり,眼はあるものとないものとがある。眼は単眼の集り。口器として2対の小あご,1対の大あごのほかに1対の強大な毒爪(どくそう)と呼ばれる顎肢(がくし)があり恐れられる。胴は各1対の歩肢を両側にもつ同じような胴節が15以上177節連続してあり,それに続いて生殖節と肛門節がある。…

※「オオムカデ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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