オガデン戦争(読み)オガデンせんそう(英語表記)War in the Ogaden

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オガデン戦争」の意味・わかりやすい解説

オガデン戦争
オガデンせんそう
War in the Ogaden

1977年に勃発した,オガデン領有をめぐるエチオピアソマリアの戦争。1977年2月11日,メンギスツ・ハイレ・マリアムが,エチオピアの国家元首にして臨時軍事行政評議会議長に就任した。軍による反対勢力の粛清が続くなか,首都アジスアベバで反軍事政権の民衆デモが起こり,全土が混乱に陥った。この機に乗じ,ソマリアのムハンマド・シアド・バーレ大統領は,正規軍 3万5000人,西ソマリア解放戦線の兵士 1万5000人を動員。ソマリア軍は 1977年5~6月にオガデンに侵入し,7月には実質的な戦闘行為に入った。9月までにソマリア軍はオガデンの 9割を掌握し,エチオピア軍は非ソマリ系地域のハレルギ,バレシダモ地方に撤退した。1974年のエチオピア革命後,状況を静観していたソビエト連邦は,エチオピア革命が真の社会主義国家の樹立をもたらすと考え,また地政学的にも判断し,エチオピア支援を打ち出した。アメリカ合衆国との同盟の破棄を条件とするソ連の軍事支援の約束にこたえ,メンギスツは 1977年4月にアメリカ軍の軍事・通信施設を閉鎖。同 1977年9月,ソ連政府はソマリアへの軍事支援を停止し,エチオピアへの武器供与を公然と開始軍事顧問団も差し向けた。ソ連の方針転換により,朝鮮民主主義人民共和国北朝鮮),キューバイエメンもエチオピアを支援した。1978年3月までに,エチオピアと同盟国はオガデンの支配権を奪還した。

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百科事典マイペディア 「オガデン戦争」の意味・わかりやすい解説

オガデン戦争【オガデンせんそう】

1977年―1978年に起こったエチオピア領オガデンOgaden地域をめぐるエチオピアとソマリアの武力紛争ソマリ系住民が多く居住する同地域は,19世紀末メネリク2世によってエチオピア帝国に併合された。そのためソマリアが独立した1960年以来,パン・ソマリズムによってソマリ族の居住地域の統一をめざしてきたソマリアと,エチオピアとの紛争が頻発していた。1977年5月エチオピアの反政府組織〈西ソマリア解放戦線〉(WSLF)が武装闘争を開始すると,ソマリア軍も支援のため進攻した。エチオピア軍は初め劣勢であったが,ソ連,キューバの大規模軍事支援を得て盛り返し,ソマリアは1978年3月撤退した。→アフリカの角
→関連項目エチオピアメネリク[2世]

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