日本大百科全書(ニッポニカ) 「オニグモ」の意味・わかりやすい解説
オニグモ
おにぐも / 鬼蜘蛛
[学] Araneus ventricosus
節足動物門クモ形綱真正クモ目コガネグモ科に属するクモ。日本各地および朝鮮半島、中国に分布し、平地から山地に普通に生息する。典型的な円網を張る大形のクモで、体長は雌30ミリメートル、雄20ミリメートルぐらい。腹部の前方の両肩は角張り、背面には葉状の斑紋(はんもん)がある。この斑紋や体色は地域的な変異に富み、別種のような感じのものもあるが、本質的な形態に違いはない。本種を含めて、この仲間の網はすべて円網で、夕方網を張り、翌朝網を畳む特異な習性があるが、地域や気象条件、成熟度などによってかならずしもこのとおりではない。
近縁種のアカオニグモA. pinguisは本州中部以北に分布する寒地性のクモで、北海道には普通にすむ。体長は雌15~18ミリメートル、雄10ミリメートルぐらい。腹部は丸くて大きく、成熟すると真っ赤になり、小さい白斑(はくはん)をもつ。イシサワオニグモA. ishisawaiは北海道から九州まで分布する日本の固有種で、山地に多い。体長は雌18~20ミリメートル、雄8ミリメートルぐらい。背腹の地色は黄褐色で両側に2本の白い縦条がある。コケオニグモA. tartaricusは、赤褐色の頭胸部以外は腹部も歩脚も緑色の美しいクモで、形はオニグモに似る。水田に多く各地でときどき発見される。ヤマシロオニグモNeoscona scyllaは日本各地に分布し、山地に普通にすむ。体長は雌12~15ミリメートル、雄8~10ミリメートル。背甲は赤褐色で頭部は濃い。腹部は褐色から黒色で、白色を交えた複雑な斑紋がある。イエオニグモN. nauticaは本州以南、台湾まで分布し、人家の軒下などに網を張る。オニグモ類中では小形種で、体長は雌10ミリメートル、雄6~7ミリメートル。背面は黒灰色である。ドヨウオニグモN. dönitziは、本州、四国、九州に分布し、水田に多い。体長は雌9ミリメートル、雄7ミリメートルで、オニグモ類中では小形種。夏と秋の土用のころ2回成熟する。水田の害虫の天敵として知られている。
[八木沼健夫]