改訂新版 世界大百科事典 「オプスデイ」の意味・わかりやすい解説
オプス・デイ
Opus Dei
スペインの宗教団体の名称。ラテン語で〈神の御業(みわざ)〉の意。1928年,マドリードでエスクリバJosé María Escrivá神父(1902-75)が創設。各自の職業,地位,生活条件の中でキリスト教の徳を体現していくことを提唱する,現実的かつ個人主義的福音を唱える。39年,内戦でフランコ側が勝利した直後,エスクリバは,小冊子《カミーノ》(邦訳《道》1961)を著し,布教と組織の拡張活動に乗り出す。しかし,その活動は表面化せず,とくに45年ころまでは,マドリード,バレンシア,バルセロナなどの大都市で徐々に共鳴者を増すことに主力を注いだ。対象は,おもに知識人,官僚,政治家,中産階級上層部など,社会的地位の高い人々であり,オプス・デイは,彼らの精神生活のみならず,社会的・政治的生活にまで影響を及ぼし得るようになっていく。こうして,オプス・デイは組織として表立った政治活動をすることはなくとも,メンバーを通してフランコ政権に近づき,背後から政治を操る政治結社の性格を帯びてきたと考えられている。とくに50年代後半からは,閣僚およびテクノクラート官僚など権力の中枢に影響力を強め,60年代には〈スペインの奇跡〉といわれる経済発展を達成,それが非民主的なフランコ体制の矛盾から国民の目をそらし,体制存続に寄与したといわれる。
執筆者:宮川 智恵子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報