オレンジ結社(読み)オレンジけっしゃ(英語表記)Orange Order; Loyal Orange Association

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オレンジ結社」の意味・わかりやすい解説

オレンジ結社
オレンジけっしゃ
Orange Order; Loyal Orange Association

アイルランドにおけるプロテスタント(→プロテスタント教会)の政治団体。1795年結成。元の名称は Orange Society。名称は,名誉革命においてカトリックジェームズ2世を排しウィリアム3世としてイギリス王位についたオランニェ公ウィレム(オレンジ公ウィリアム)に由来する。アイルランドではかねてカトリックとプロテスタントが反目し合っていたが,アルスターへの長老派入植や 1641年の反乱,また名誉革命で王位を追われたジェームズ2世がアイルランドに上陸して復権をはかり 1691年まで戦いが続いたことなどから,両者対立が激化していた。1795年の大規模な衝突「ダイヤモンドの戦闘」を機に,プロテスタントによる支配を続けるための秘密結社として結成され,アイルランドをはじめイギリスとその領土内各地に支部を広げた。1835年,イギリス議会下院が信仰に基づいて入会を制限する団体や秘密結社の禁止を王に請願したが,これはオレンジ結社を念頭に置いたものだった。毎年 7月12日に行なわれる行進行事が有名で,これはウィリアム3世の軍が 1691年にアイルランドで最終的勝利を収めたオーグリムの戦いを記念している。1912年,アイルランド自治法案が提出されるとオレンジ結社はアルスターでの抵抗を激化させ,それ以降プロテスタント連合派の拠点となった。

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改訂新版 世界大百科事典 「オレンジ結社」の意味・わかりやすい解説

オレンジ結社 (オレンジけっしゃ)
Orange Order

プロテスタントの優位体制を維持し,イギリスの立憲君主制を守ることを目的とした,北アイルランド・プロテスタントの組織。1795年結成。オレンジ公ウィリアム(オラニエ公ウィレム)にちなんで命名された。1791年のユナイテッド・アイリッシュメンの結成,93年のカトリック救済法の成立に危機感を抱いたプロテスタントが,カトリック組織との武力抗争ののちに結成した。ユナイテッド・アイリッシュメンの運動,D.オーコンネルのカトリック解放と合同撤廃の運動,パーネルの土地戦争,グラッドストンの自治政策など,アイルランドの自主自立方策にことごとく反対し,1913年にはアルスター義勇軍を組織してアイルランド自治法案に徹底抗戦する態度を示した。21年の北アイルランド成立以来,おもだった政治・社会の指導者はこの結社のメンバーであった。毎年7月12日のベルファストでは,1690年のボインの戦の勝利を祝うこの結社の大行進が行われる。
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デジタル大辞泉プラス 「オレンジ結社」の解説

オレンジ結社

1795年にアイルランドで結成されたプロテスタントの秘密結社。カトリック組織と対抗し、イギリスにおけるプロテスタントの優位性を保つことを目的とする。名称はオレンジ公ウィリアムにちなむ。

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世界大百科事典(旧版)内のオレンジ結社の言及

【北アイルランド】より

…さらに,選挙区の徹底したゲリマンダリング(ゲリマンダー)と地方税納付額による選挙資格の制限,会社への投票権付与(実際には社長の二重投票権)などによりプロテスタント系の地方議員の当選を確実にし,政策面でも公営住宅への入居などでプロテスタント系を優遇した。歴代首相,閣僚,ユニオニスト党議員のほとんどをオレンジ結社会員で固めるなど,徹底したプロテスタント優位体制がしかれてきた。また,イギリスでは珍しく警察は武装しており,そのほとんどがプロテスタント系である。…

※「オレンジ結社」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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