日本大百科全書(ニッポニカ) 「カスザメ」の意味・わかりやすい解説
カスザメ
かすざめ / 糟鮫
軟骨魚綱カスザメ目の科や属の総称、またはその1種の名称。カスザメ科Squatinidaeはカスザメ属Squatinaのみからなる。カスザメ属は体がエイ類のように縦扁(じゅうへん)していることが大きな特徴であるが、エイ類とは鰓孔(さいこう)の位置が頭部と胸びれの間の体側面にあることで区別できる(エイ類では体の腹面にある)。カスザメ属は世界に10数種が知られ、日本近海にはカスザメS. japonicaのほかに、コロザメとタイワンコロザメS. formosaが分布している。
種としてのカスザメ(英名Japanese angelshark)は胸びれの外角がほぼ直角をなすこと、両眼の間の長さが左右の噴水孔の間の長さより短いこと、腹びれの後端が第1背びれの起部に達しないことなどでコロザメやタイワンコロザメと区別できる。全長2メートルほどになる。海底生活をし、砂に潜って近づいてくる魚などを待ち、口に吸い込んで食べる。生殖方法は胎生で、春に10尾内外の子を産む。北海道南部以南の日本各地の沿岸域、黄海、東シナ海に分布する。練り製品の原料になるほか、その粗い皮膚はやすり、刀剣の柄(え)の滑り止めなどにされる。国際自然保護連合(IUCN)のレッド・リストでは、絶滅危惧(きぐ)種中の「深刻な危機」(CR)に指定されている(2021年9月時点)。
[仲谷一宏 2021年10月20日]