東アジアの体鳴楽器。容器状の金属製楽器ないし音具は、日本では一般に「かね」という語で総称されるが、楽器学的には振動部分の違いによってゴング系とベル系に区分される(2枚の円盤を打ち合わせるシンバル系の鐃鈸(にょうはち)は別系)。
[山口 修]
主として「鉦」という漢字をあてる場合のもの。「しょう」ともよぶ。縁付き円盤の形をしていて、容器の中央に近いところが振動する。東アジアのゴングは、円盤部分がほぼ平らであるため、銅鑼(どら)のようにいろいろな音高が複雑に混じり合う傾向があるが、肉を分厚くすることにより、澄んだ音を出せる鉦鼓(しょうこ)のような例もある。いずれにせよ、インドネシアのこぶ付きゴングを中心としたガムラン楽器のように旋律を奏するのではなく、一定の音楽的・儀式的時間を明示したり、拍子やリズムの表現に活用される。その例は、雅楽の鉦鼓、祭礼・歌舞伎(かぶき)・寄席(よせ)の囃子(はやし)での当り鉦(摺(す)り鉦)があり、さらに風流(ふりゅう)系の太鼓踊り・盆踊りなどで他の楽器との対比を示す音を表出する楽器として重要である。その音響の特性は、擬音語として定着するほどであり、祇園(ぎおん)囃子でのコンチキ、神田(かんだ)囃子でのヨスケ(摺って出す音)などに現れている。これらの音は、円盤の内側を打ったり、こすったりして出てくる音であるが、大形の鉦の場合、双盤(そうばん)・伏鉦(ふせがね)・叩(たた)き鉦・松虫(歌舞伎用)のように、円盤の外側をたたくことにより音響効果として大小や明暗の違いが明確になって、念仏などに活用される。鉦の特殊な用途としては、八丁鉦(はっちょうがね)がある。これは大道芸としてのアクロバットで、八丁の鉦を紐(ひも)で腰の周りに吊(つ)るし、身体を回すときに遠心力で鉦が水平に浮かび上がったところをリズミカルに打ち鳴らしたと推定される。
[山口 修]
この「かね」は「鐘」の漢字をあてる場合のほか、「鈴(れい)」「鏧(磬)(きん)」などが含まれ、おおむね細長い、あるいは浅い椀(わん)形の容器の周辺部分がおもに振動する類のものである。鐘と鈴は吊り下げ型で、「鐘も撞木(しゅもく)(桴(ばち))の当たりがら」(つれあいのよしあししだいで本人のよしあしも、の意)といわれるほどに、打ち方が問題である。これに対して鏧は、上向きに台の上に据え置いてあるので、たたき方による差は大きくない。そして特徴としては、澄んだ音が持続し、仏式で独特の雰囲気をつくるのに役だっている。これを2、3個セットにしたものは、やや旋律的な表現が可能となり、歌舞伎囃子ではオルゴールと称されている。ベル系のかねは、全般に持続性の延長としての余韻に持ち味がある。
[山口 修]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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