手回しやぜんまいで小針のついた円筒を回転させ、金属の櫛(くし)形の音階板をはじいて美しい音楽を奏でる自動演奏装置。ヨーロッパでは、19世紀にフランスの人形師ジュモーなどがこの機械装置をセットしたオルゴール人形を作製し、音色にあわせて人形の持つ鳥籠(とりかご)の中の小鳥も歌いながら動き回るものなどが現れた。20世紀後半に、円筒のかわりに鋼鉄に曲をプレスし、演奏するディスク(円盤)型が発明され、最盛期を迎えた。
日本には江戸時代に渡来、1750年(寛延3)刊の『紅毛訳問答』に「オルゴル」とある。オランダ語のオルゲル(orgelオルガンの意)からきたといわれ、訳して「自鳴琴(きん)」「風簫(ふうしょう)」ともよんだ。1830年(天保1)刊の『嬉遊笑覧(きゆうしょうらん)』(喜多村信節(きたむらのぶよ)著)にその構造が紹介されているが、1852年(嘉永5)には江戸・深川で、オランダ渡りのチャルゴロの名で見せ物になるほど珍しがられた。国立科学博物館には、嘉永(かえい)年間(1848~1854)に時計師小林伝次郎がつくったオルゴール付き置き時計がある。玩具化されるようになったのは明治中期からで、日露戦争前に輸入品をまねて製作され始め、ハンドルを回転させながら鳴らす最新流行の音楽玩具として愛好された。また、これをさらに簡略化した新型のがらがらが考案され、明治末期から出回った。これは、筒状のボール紙の中に鋼鉄製の針金数本を植え付け、柄(え)を持って振ると、振り子が針金に当たって音を響かせるもので、これもオルゴールの名で登場し、乳幼児向きの玩具として迎えられ、現在もみられる。
最近つくられているものは、置き時計、手箱、シガレット・ケースなどにしかけたものなどで、箱の蓋(ふた)をあけると鳴り出すものが多い。また乳児向きのベッドメリーにも応用されている。
[斎藤良輔]
『名村義人著『オルゴールの詩』(1984・音楽之友社)』
18世紀末にスイスの時計製作者たちによって考案された一種の自動演奏器具。オランダ語orgelの転訛。英語ではミュージカル・ボックスという。金属のピンを植えた円筒を回転させ,これで音階音を発するくし状金属片をはじいて音楽を奏でる。ピンを円板に植えたものも用いられた。19世紀前半中ごろには,ばね仕掛けのない手回し式のものが玩具として作られるようになり,世界的に広がっていった。日本にもこのころ伝来し,自鳴琴の字をあてた。高級なものはトレモロ演奏や小型のドラムセットやベルなどの伴奏も加えられ,また何曲もの連続演奏のできる精巧なものが出現した。現在では手箱や時計などにしくまれる小型のものが広く普及しており,日本も主要な製作国となっている。他に,振ると筒の中の金属棒が澄んだ音を発する〈がらがら〉の一種の玩具や,板の上に仏具の鈴の大小を並べて取り付けた下座(歌舞伎囃子)用楽器がオルゴールと呼ばれている。
執筆者:白砂 昭一
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