知恵蔵 「カフェイン中毒」の解説
カフェイン中毒
カフェイン中毒には、慢性症状と急性症状があり、長期摂取した場合の慢性カフェイン中毒(カフェイン依存症)としては、カフェインをとらないと不安や焦燥感などが起こることがある。
急性作用を起こす摂取量には個人差があり、人によってはどんな少量であってもカフェインの摂取によって頭痛や吐き気を生じる。日本では1日摂取許容量が設定されていないが、体内の代謝によりカフェインが半減するには約3~6時間を要することから、一般には3時間以内の大量摂取(体重1キロ当たり十数ミリグラム)で、興奮、震え、不安、頭痛、めまい、嘔吐(おうと)などの中毒症状が表れるとされる。海外では子どもや妊娠中の女性について1日の最大摂取量を定めている場合があり、例えば妊婦について英国食品基準庁は1日200ミリグラム以下、世界保健機関(WHO)は1日に3~4杯以下のコーヒー(1杯当たりカフェイン60~180ミリグラム)を勧告している。
致死量についても定まってはいないが、数グラム~10グラム程度、血液1ミリリットル当たりの致死濃度は79~567マイクログラムとされる。アルコールとの同時摂取や妊娠中の場合、カフェインの分解能力が低下するため、中毒を起こしたり死に至ったりする摂取量は更に少なくなる。妊婦は過剰に摂取すると胎盤への血流が著しく低下することや、授乳中にはカフェインが容易に乳汁中に入ることが証明されており、胎児・乳児の発育に影響するとされる。母親のカフェインの大量消費と乳幼児突然死症候群との関係も指摘されている。
米国では急性カフェイン中毒による死亡例が十数件報告されている。2015年12月には、九州地方の20代前半の男性がカフェインを大量摂取し、中毒死していたことが福岡大学法医学教室の分析により分かった。厚生労働省によると、過去10年間にカフェイン中毒による死亡例はなく、国内初の報告例とみられる。死亡した男性は深夜勤務の眠気覚ましのためとして、約1年前から複数のカフェイン入り清涼飲料水を常飲していたといい、カフェイン錠剤も服用していた。
眠気予防のカフェイン錠はビタミン剤などと同じ「第3類医薬品」などとして市販され、1錠当たり100ミリグラム程度のカフェインを含む。医薬部外品に指定された栄養ドリンクは「滋養強壮」など効能効果をうたうことができ、いわゆる「エナジードリンク」と呼ばれるものを含むカフェイン入り清涼飲料水は、効能効果はうたえないが、1本当たり数十~200ミリグラム近いカフェインを含む。
(葛西奈津子 フリーランスライター/2016年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報