改訂新版 世界大百科事典 「カボス」の意味・わかりやすい解説
カボス
Citrus sphaerocarpa Hort.ex Tanaka
初秋から冬季にかけ出荷される,大分県特産の調味用かんきつ類の一つ。ミカン科の常緑広葉樹。名は,ダイダイの古名カブスから転訛したといわれる。大分県に古くから分布する。臼杵市,竹田市を中心に樹齢100年を超えるものが多数あり,元祖樹は樹齢200年以上と推定されている。ユズ近縁種と思われるが,起源は明らかでない。かんきつ類の中では寒さに強く,年平均14~15℃のところまで栽培できる。近年,主として,大分,宮崎県で増植されている。樹高3~4m。枝は横に張りやや下垂性。枝にはふつうとげがない。葉は波うつ。つぼみは淡紫色だが開花時は白い。花弁は五つで花はやや小さい。5月中旬ころ開花する。8月ころより緑果を採収するが,秋には黄色になる。果実は球形で重さ100~150g。果頂部に凹環があり,その内側に低い乳頭がある。果面はユズに比べ滑らか。肉質は軟らかく,多汁。種子を20個前後含む。種子は多胚性。主に果汁を搾って利用し,日本料理の調味用に用いられる。フグ料理には欠かせないものといわれる。濃度4~6%の酸味とクネンボ(九年母)に似た独特の香りが風味を特徴づけている。一部,果汁飲料にもされている。
執筆者:山田 彬雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報