カルマン渦列(読み)カルマンうずれつ(その他表記)Kármán vortex street

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カルマン渦列」の意味・わかりやすい解説

カルマン渦列
カルマンうずれつ
Kármán vortex street

柱状物体直角に流れが当たるとき,物体の背後から交互に逆向きの渦がはがれて,2列の規則正しい渦列となって下流に流れ去る。各列には同じ向きの渦が等間隔に並び,2列の渦は互いに逆向きで,一つの列の渦は常に他の列の中間にある。これをカルマン渦列という。この渦列は古くから知られていたが,テオドール・フォン・カルマンが 1911年に初めて理論的説明を与えたので,この名がある。渦列の間隔を h,1列のなかでの渦の間隔を a とするとき,流体を完全流体とするカルマンの理論では,h/a=0.281 のとき渦列は安定で,それ以外の配置では不安定である。実際の粘性流体においては,円柱の下流のカルマン渦列はレイノルズ数 RUd/ν(U は流れの速度,d は円柱の直径,νは流体の動粘性率)の値が約 50から約 500の範囲において観測され,比 h/a も理論値より大きく,0.3に近い。風の中で電線が出すエオルス音は,カルマン渦列の発生が原因である。
気象用語としては,孤立した山などの風下に現れる,層積雲の 2本の渦の列をカルマン渦列と呼ぶ。日本付近では,チェジュ島屋久島利尻島千島列島の風下などに多く見られる。特に大韓民国の南の島であるチェジュ島の風下にできるものは有名。走向はほぼ下層風の流れに沿っている。冬季冬型気圧配置がゆるんで寒気流入が弱まり,風向が一定した下層風が持続する海上で発生する。

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世界大百科事典(旧版)内のカルマン渦列の言及

【流れ】より

… Reが大きくなると流れの前後の対称性はしだいにくずれていく。もちろん円弧のような物体ではRe=0でも凹部に目玉状の回転流があるが,例えば円柱のような物体でもReが5程度を超えると,背部に上下対称の1対の目玉状の回転流が現れ,それがReの増大とともにしだいに後方にのびていくと流れの上下の対称性も破れ,交互に渦が離脱して規則正しい渦の列(カルマン渦列)が形成される。さらにReを増すと,規則性が破れて前にも述べたように乱れた伴流に移行する。…

※「カルマン渦列」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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