カントリー・リスク(読み)かんとりーりすく(英語表記)country risk

翻訳|country risk

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カントリー・リスク」の意味・わかりやすい解説

カントリー・リスク
かんとりーりすく
country risk

外国へ直接投資貸付を行う場合に、その債務返済等をめぐって融資対象国自体によって引き起こされる危険性をいう。当該国の信用度をも表し、リスク度の高い国ほど金利・融資条件が厳しくなる。カントリー・リスクの度合いは、国際収支外貨準備高、対外債務残高などの経済的要素を基礎に、政治安定性や国の規模などを総合して判断される。世界銀行では、デット・サービス比率debt service ratio(年間の対外債務元利支払額を年間輸出額で割った比率)が20%を超える国を要注意としていたが、最近では政治や社会・宗教問題などの変動が大きな要因となり、それらが経済的要因と密接に関連しているため、そのリスク評価がむずかしくなっている。

 なお、類語として「地政学リスク」がある。中東情勢のように地理的条件により国際関係に不安定な影響を及ぼし、地域紛争やテロなど政治的・軍事的な緊張をもたらすリスクをいう。原油価格や株式相場、為替(かわせ)相場などの経済的変動を引き起こし、国際経済や企業活動に影響を与える不安定要因となる。

[秋山憲治]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カントリー・リスク」の意味・わかりやすい解説

カントリー・リスク
country risk

海外への投資や貸付けに伴う,回収不能などの危険 (リスク) の度合いをいう。投資や金融活動は国内だけでなく,海外を対象とすることも日常的になってきたが,政情不安定,制度改変の政治的要素,債務の累積に伴う返済困難という経済的要素次第では経済活動そのものに支障をきたし,成果の回収ができなくなる可能性もある。このため事前にカントリー・リスクを把握することが重要となる。具体的なリスクとして,(1) 投資に関連しては,戦争収用による事業継続の困難,輸入自由化による競争激化,労働攻勢の激化,送金の制限,部品輸入の制限,(2) 金融に関連しては,為替取引の制限と途絶為替レートの大幅変動などをあげることが多い。

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百科事典マイペディア 「カントリー・リスク」の意味・わかりやすい解説

カントリー・リスク

投資・融資対象国の危険度。企業が海外取引に乗り出す際に,その相手国の政治・経済・社会問題を考慮する。評価の主な目安は,総輸出額に対する対外債務返済額の割合,政治的・社会的安定性である。

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