キジル石窟(読み)キジルせっくつ

改訂新版 世界大百科事典 「キジル石窟」の意味・わかりやすい解説

キジル石窟 (キジルせっくつ)

中国,新疆ウイグル自治区拝城県克子爾(キジルKizil)鎮の南東7km,庫車(クチヤ)県の西70kmにあり,ムザルト川左岸の崖面に開掘された,タリム盆地最大の規模をもつ石窟寺院。窟数236(1973現在)。1906年(グリュンウェーデル)と14年(ル・コック)のドイツ隊の調査で注目され,07年にはペリオが,28年には黄文弼が調査した。53,73年には北京大学を中心とする本格的な調査が行われた。石窟分布の詳細はドイツ隊の略図以外わからないが,北京大学は谷西,谷内,谷東,後山南・北の5群に分類した。石窟には(1)ボールト天井の長方堂,(2)ドーム天井ないし三角持送り天井の方形堂に前堂を付すもの,(3)長方堂の奥に中心柱をつくったもの,(4)主室奥壁に尊像龕をつくり,奥壁左右に遶道(にようどう)用のトンネル通廊をつくったもの,(5)側壁に入口をもつ円蓋方形堂などの構造があり,とくに大像設置を目的とした(4)が注意される。壁面ジャータカの諸テーマ,仏菩薩貴族・武人供養者,天人,涅槃図などの壁画で満たされ,一般に二つの様式が認められるが,年代については4~5世紀と6~8世紀,あるいは500年以降と7~8世紀などといわれ,定まらない。近年の中国の調査では壁中の麦藁材料に炭素14法による年代決定が行われ,4~7世紀に三つの段階を追ってこの石窟寺院が展開したとする仮説が提出された。
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百科事典マイペディア 「キジル石窟」の意味・わかりやすい解説

キジル石窟【キジルせっくつ】

中国,新疆ウイグル自治区拝城県克孜爾(キジルKizil)鎮の南東7kmのクチャ(庫車)付近にある5―7世紀の仏教遺跡。イラン系のトカラ人の所産で,初期のものは方形の洞室にボールトをのせる形式と組上げ式天井の形式からなる窟寺で,内部壁画はガンダーラ美術を継ぐ。後期にはトンネル形天井ものが多くなり,壁画は南方仏教的な主題特色とし,構図形態ササン朝ペルシア,ビザンティン様式の影響もみえる。
→関連項目ショルチュク

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