デジタル大辞泉 「キッド」の意味・読み・例文・類語
キッド(William Kidd)
キッド(Benjamin Kidd)
キッド(kid)
2 子ヤギの皮。薄くてやわらかく、光沢がある。衣類・手袋・靴などに用いられる。
3 子供。若者。
イギリスの社会学者。19世紀後半の社会ダーウィン主義の方法論的立場から、『社会進化論』(1894)『西洋文明の諸原理』(1902)などを著した。イギリスにおける社会ダーウィン主義の展開のなかで、スペンサーのように「個人」を重視する立場ではなく、むしろ「社会」を重視する立場をとるところに特色を有する。キッドによれば、社会の進化は社会諸集団間の闘争と淘汰(とうた)によって実現されるものであり、その過程において社会に統合をもたらす宗教の役割が強調されなければならない。バックルやバジョットが「個人」の合理的知性に依拠するのに対して、キッドは「社会」の超合理的心性を重視する社会統合の視点にたっている。
[田中義久]
イギリスの海賊。通称キャプテン・キッド。スコットランドに生まれる。アメリカに渡って船長、船主となり、1689年から2、3年間私掠(しりゃく)船長として海軍のために働いた。95年たまたま商用でロンドンに赴いた際、インド洋方面の海賊掃討船の船長に選ばれ、96年アドベンチャー(冒険)号を率いて出航、マダガスカル島近海を経て、97年インド洋に入ったが、成果は思わしくなく、かえって自ら商船を襲って海賊行為を働くに至った。98年海賊の根拠地マダガスカル島で乗船をかえ、翌年カリブ海に入り、ボストンに上陸したところを捕らえられ、本国で裁かれたうえ処刑された。彼が隠匿したとされる財宝に関しては小説などによく取り上げられている。
[松村 赳]
『別枝達夫著『キャプテン・キッド』(中公新書)』
イギリスの劇作家。エリザベス朝時代、「復讐(ふくしゅう)悲劇」流行の端緒となった『スペイン悲劇』(1592初演)の作者として知られる。1580年スペインの対ポルトガル戦勝利を背景に、息子ホレイシオをその恋敵(こいがたき)に殺された将軍ハイエロニモの半狂乱の悲嘆と、劇の演出に見せかけて行われる復讐と彼の死とを骨子に展開するこのドラマは、筋立て、性格描写ともに優れ、好評を博した。この作品にはシェークスピアの『ハムレット』のモチーフに似通ったところがある。キッドには、現存しないが、ハムレットを扱った戯曲(普通「原作ハムレット」とよばれる)があって、シェークスピアはそれをヒントに『ハムレット』をものしたとする説もある。ほかにR・ガルニエからの翻訳劇『コルネリア』(1594初演)などがある。
[冨原芳彰]
子ヤギやそれに類するもののなめし革であり、キッド・レザーの略称。羊皮より繊維の密度が大でじょうぶだが、子牛皮よりは粗である。表面(銀面)も子牛皮ほどではないが耐摩耗性もあり、優雅な感じがあり、柔軟でもある。高級靴の甲革や手袋、袋物などに用いられる。原皮の産地は、中央ヨーロッパ、中央アジア、インドなどが有名。二浴法クロムなめしによるものや、卵黄、オリーブ油、ミョウバンによる結合なめしのものをキッドといい、スマック・タンニンによるなめし革をモロッコ革、渋とクロムの結合したものをドンゴラ革とよび区別している。また、まだなめさない原皮、キッド・スキンの略称もキッドという。キッド製の靴や手袋のことをキッドと称することもあり、子ヤギや子カモシカをさすこともある。
[田中俊子]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
イギリスの劇作家。フランス語やイタリア語からの翻訳・翻案のほかに,数編の悲劇,喜劇をものしたとされるが,確実ではない。演劇史上彼の名は《スペイン悲劇》(1585ころ初演)1作によって記憶される。スペインの将軍ハイエローニモが,政略結婚の犠牲になって暗殺された息子ホレーシオの復讐を誓い,辛酸をなめて犯人を探し当てたのち,宮廷で演じられる劇中劇に彼らを引き入れ,演技と見せて彼らを殺しみずからも自殺する,という筋。この劇は,悲嘆のあまり半狂乱に陥る主人公の心理描写に加えて,劇中いく度も現れて血の復讐を促す亡霊,誇張された朗誦体で語られる独白,といったローマのセネカの劇作の流れを汲むセンセーショナルな道具立てによって,この後,J.マーストンやC.ターナーらに受け継がれていく流血復讐悲劇の流行の端緒を開いた。シェークスピアの《ハムレット》はこの悲劇に構想の多くを負っていると考えられるが,ことによると,1580年代末に上演されて人気を博し,《ハムレット》の粉本となったとされるいわゆる《原ハムレット》の作者はキッドであるのかもしれない。
執筆者:笹山 隆
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出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報
…主機は航空機転用型ガスタービンの開発に伴い,これを各種組み合わせた方式の推進機関が多用されるに至った。1980年代前半の代表的な駆逐艦として,ソ連の〈ウダロイ〉型(8500トン)に対応して,西側ではアメリカの〈スプールアンス〉型(満載7810トン)および同型改装の〈キッド〉型(満載8300トン)が挙げられる。【佐倉 俊二】。…
…モヘアは毛長15~18cmで,光沢と弾力にすぐれ,薄地の夏服地,肩掛け,高級ビロードなどの原料とする。このほか皮革も利用され,羊皮よりもじょうぶで,銀面の模様が美しいので,キッドと呼ばれ手袋や防寒衣料,袋物に利用される。
[飼養管理]
ヤギはじょうぶで温和な家畜であり,食性も広いので飼いやすい家畜である。…
※「キッド」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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